子育て以外に興味がわかなかった日々
岡村 だけど、ご主人は芸能界のど真ん中にいる。まったく関わらないわけにもいかないでしょ?
小林 一切ないんです。彼の会社にも行ったことがありませんし。息子もそう。仕事の関係者とは交わることがないんです。
岡村 へえ~!
小林 だから余計、そういった世界からは隔離されていたというか。息子の学校とママ友と近所のスーパーと私の実家、それが自分のテリトリーでずっと生きてきた。でもそれがとっても楽しかった。
岡村 奔放だったとおっしゃいましたが、もともと少女時代から好奇心が旺盛で。スパイダースやタイガースといったGSが大好きで、追っかけをしたり、米軍基地へ遊びに行ってはいろんな人と交流して。映画やファッション、音楽が大好きだったそうですね。
小林 そう。大好き。
岡村 子育て期間中も、音楽を聴いたり映画を観たり、カルチャーに触れることはしていました?
小林 まったくないんです。流行った音楽も知らなければ、テレビで流行ったドラマも知らない。子どもと一緒に観る番組しか観ないんです。だから、後で知ったんです。こういうのがあったんだあって。
まるでエアポケットのようにその時代がない。恥ずかしいほど何も知らない生活でした。
岡村 とはいえ、少しは自分の時間もあるでしょ? そういうときは自由なんじゃないですか? 好きなロックを聴くとか。
小林 全然。子育て以外に興味がわかなかったんでしょうね。だから、その反動で、最近は、再発されたロックのCDをクルマでガンガン聴いてるんです(笑)。
岡村 よく、バリバリ働いていた人が突然子育てに入ると、「本当の私はこれじゃない!」って思うことも多いと聞きますけれど。
小林 私は、37で子どもを産んでるんです。それまで、好きに暮らしましたし、仕事でもプライベートでも海外にもよく行きました。やり尽くしたとまでは言いませんが、ある程度のことはできたのかなって。
だから、その後も仕事を続けたい、という気持ちはなかったのかな……。うん、なかった。だから子育て中心の生活に切り替えることがつらくなかったんです。
2020.08.16(日)
文=辛島いづみ
撮影=杉山拓也