軽井沢らしい並木道に佇む一軒家のフランス料理店。森の多い軽井沢でキノコは身近な存在だが、内堀シェフは町でも“キノコ博士”と呼ばれている。
「東京で修業を積んで、独立するときに軽井沢を選んだのは、やはり“森”があるからでした。近所を歩いているだけで『ほら、あそこにタマゴタケが』みたいなことが普通にある、最高の環境です」
曰く、キノコを日々探していると“キノコ目”になるそうで、向こうから飛び込んでくるのだとか。
「キノコを学ぶと、木を学び、森を学ぶことにもなる。キノコは森の生と死の循環に深く関わっていて、命のことや環境問題にも想いを寄せるようになりました」
キノコからの学び、深い……!
「料理のこともそう。自分で採ったり、毎日のように全国のキノコハンターや農家さんからキノコが届くと、僕はキノコから『さあ、どうおいしくしてくれるんだ?』って問いかけられ、その静かな圧が僕を少しずつ成長させてくれる。キノコは最高の師匠なんです」
本日のキノコの一皿
10種類以上のキノコが使われる名物プレート。ランチ 2,400円にオプションとして追加。内容は季節による。1,780円~。写真は2人分。
1. タモギタケ
「鮮やかな黄色でお皿の上を華やかにしてくれ、独特の香りはほかのキノコと合わせるとさらに魅力を発揮します」
2. ササクレヒトヨタケ
「たったひと晩で溶けて消えてしまう儚いキノコ。成熟する前の幼菌を使います。溶けた液も旨みがあるんですよ」
3. マイタケ
「スーパーでも買えるおなじみのキノコ。長持ちしますが、鮮度が大事。朝採れたものだけを使うようにしています」
4. 白マイタケ
「ナッツのような甘い風味が特徴。特にパリッと焼き目をつけてあげるとアーモンドのような香ばしさが出ます」
5. バイリング
「つけ根はコリコリ、傘はふんわりした食感の対比が面白い。美白成分があり、『白霊茸』という幻想的な別名も」
6. 野生種えのき
「野生種から菌を採取して栽培。歯切れがよく、いちごジャムのような甘い香りがするのでデザートにも使います」
7. シイタケ
「日本で栽培に成功した、世界に誇るキノコで、お隣の群馬県が発祥の地とも。原木栽培で、春・秋の旬のものを使用」
8. ハナビラタケ
「ヒラヒラと美しく、森で出合うとうれしくなります。しなやかな歯切れでクセがなく、料理しやすいキノコです」
9. ポルトヴェーラ
「オーストラリア原産の大型マッシュルーム。大きいほど味が強くなります。日本でも人気が出始めているキノコ」
10. トガリアミガサタケ
「モリーユとも呼ばれ、古くから西洋人に愛されているキノコ。中が空洞なのでディナーではつめ物をする料理に」
11. ハタケシメジ
「シメジにも色々な種類がある中で味のよさでは三本の指に入ります。こちらは栽培ものですが、天然もあります」
20種類のキノコのポタージュ
キノコ好きにはたまらない、キノコの魅力を凝縮した一皿。キノコは冷凍熟成し、旨みを増幅。岡山県産トリュフと栽培品の冬虫夏草を添えて。ランチコース 2,400円に含まれる。
2020.06.25(木)
Photographs=Nanae Suzuki