イタリア人の習慣と危機感のなさが 原因のひとつ!?
当時イタリアでは、コロナを怖がり過ぎて経済を停滞させる方が恐ろしい! と、できるだけいつも通りの暮らしが続けられていました。
挨拶の握手や抱擁、両頬へのキス。おしゃべりなイタリア人たちが顔を突き合わせて楽しむアペリティーボ。感染地域は特定されているから、それ以外は大丈夫、という感覚で。
元ラツィオ州知事でイタリアの連立与党、民主党のジンガレッティ書記長も、わざわざミラノのナヴィリオで、アペリティーボを楽しむ様子をSNSにアップ。
でも数日後、見事に感染……。
そのほか、なんとレッドゾーンにもかかわらずコドーニョからトレンティーノ州にスキーバカンスに出かけた老齢カップルや、わざわざ南イタリアから北へスキーに出かける人も!
彼らものちに陽性が確認されました。
全土に感染を運ぶ!? ミラノから大脱走
そんな危機感のなさが危惧されていたころ、ミラノを含むロンバルディア州全体と北イタリア14県(報道時は11県)が封鎖されると3月7日(土)の夜にスクープとして報じられました。
すると今度は、慌てて詰めたであろうスーツケースを引いた大群が、ミラノ中央駅に集結。ひとまず乗れる列車やバス、車で、トスカーナやローマ、ナポリ、そしてシチリアへ……。
しかし、翌朝の正式発表で伝えられたのは、封鎖というより行動抑制がコンセプトの法令でした。
休校、イベントの中止、ショッピングセンターの休日およびその前日の休業、飲食店の営業時間制限(6:00~18:00)、ミサや結婚式、お葬式の中止。
持病のある高齢者の外出自粛、指定エリアの出入り禁止(仕事や健康上の理由を除く。ただし許可証が必要)などなど。
イタリア人の老若男女は、集まるのが好きな人が多く、しかも人と人との距離が近いときでもマスクは一般的につけないし、咳エチケットも浸透していない。
日本と比べても感染対策の意識が低いうえ、危機感もないから、行動に対する遠回しの“注意勧告”といった趣だったのです。
逃亡した人々が到着するであろう中部や南部の駅、空港では検疫を強化。
各州知事が北イタリアから到着した人に、ホームドクターへの通達および14日間の自主隔離も通告しました。
しかし、時すでに遅し……。
煽る報道と常軌を逸した非常識な人々によって、ウイルス感染の可能性濃厚な人々がイタリア各地へ散ってしまったのです。
その数、なんと数万人!
「一人で自宅隔離になったら困る! 実家に帰る!」。そんな気持ちはわからないでもないし、家族を地元に残してきたビジネスマンもいたでしょう。
でも、各地では怒りの声が爆発しました。頼りの実家に到着するも家に入れてもらえず、車で自主隔離を迫られた男性もいたようです。
2020.03.15(日)
文=岩田デノーラ砂和子