マスクと一緒に、パスタや小麦が消えた

 まず、イタリア国内で感染者の接触者を追跡し、“感染の可能性がある”全員を検査。そして、アウトブレイクしている地域を特定。同時に、陽性者の約半数に無症状の感染者がいることがわかりました。

 対象地域で多くの検査を行うことで、無症状な感染者が多数いることも判明。

 そこで2月23日(日)には対象地域の移動制限、休校、イベント中止などが盛り込まれた緊急法令を発令。

 いわゆる移動が制限される「レッドゾーン」が誕生したのです。

 突然の封鎖を警戒したミラノや周辺都市では、買い占めパニックも発生。

 パスタや小麦、トイレットペーパー、マスクなどが一時期、店頭から消えました。

遠い南イタリアでも感染! しかし対応は早かった

 レッドゾーンの出現から間もなく、各地でも感染報告が届くようになりますが、経路をたどれば、北イタリアの感染地域もしくは付近との接触があった人がほとんど。

 たとえば、私の住むイタリア最南端のシチリア州パレルモでも、2月25日(火)にベルガモ(ミラノ近郊)からの旅行者1名に陽性が判明。

 感染者は即座に隔離入院。また感染者が滞在していたホテルでは、濃厚接触が疑われる同行者29名とスタッフ合わせて約40名をホテル内で検疫隔離させたのです。

 感染発覚の翌朝には、防護服の検査員が全員検査に訪れるなど、それはそれはあっという間の出来事でした。

 2週間の検疫隔離期間中、繰り返された検査で無症状感染者が2名、見つかっています。

 全検査と厳格な隔離措置により、感染発覚時も検疫中もホテル周辺で混乱が起きることもなく、平穏に日々は過ぎていきました。

 もし、この無症状感染者が旅行を続けていたら? 疑心暗鬼になり、パニックも起きていたかもしれません。

 ほかにも、陽性者が確認された街の3,000人全員に検査が実施されたり (無症状感染者含む陽性者数名を発見)、感染の可能性があるエリアをしらみつぶしに検査して状況を可視化したり。

 そのため感染のない地域では、ほとんど不安を感じないまま過ごせていました。

 しかし、それは一方で油断を促すことにもなったのです。

※ちなみにイタリアはホームドクター制。検査をしたい誰もが病院には駆け込めません。まずホームドクターおよび専用番号に連絡し、症状が認められた場合に病院の外に設置されたテントで検査、もしくは検査員が訪問します。

2020.03.15(日)
文=岩田デノーラ砂和子