このままでは日本の風土病になる

 しかしながら、HPVワクチン接種を積極的に勧奨しないという国の姿勢は、将来の世代の生命や健康を守るという責務を果たしていないと私は考えます。

 世界各国でワクチン接種が進む中、このまま日本だけ1%未満の接種率が続けば、近い将来、子宮頸がんは日本にしかない「風土病」になる可能性さえあります。

 日本では女性への接種さえ普及しない中、世界ではより効果の高い「9価ワクチン」というワクチンが、女性のみならず男性にも投与されるようになってきています。

 日本は世界に1周遅れどころか、3周遅れているのです。

 残念ながら、日本のマスメディアは過去に反ワクチンの一大キャンペーンを張ったせいか、HPVワクチンの有効性や安全性に関する情報をほとんど報道しません。

 今回、「文藝春秋」3月号に私の論考「子宮頸がんワクチンは薬害ではない」が掲載されましたが、それまで複数のメディアに断られ続けました。

 日本のマスメディアの科学的リテラシーの低さが、子宮頸がんワクチンの接種率向上を阻害している一面もあると考えられます。

 HPVワクチンに対する正しい理解が定着することを願ってやみません。


 本記事のより詳しい内容は「文藝春秋」3月号および「文藝春秋digital」に掲載の「子宮頸がんワクチンは薬害ではない」をご覧ください。

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※こちらの記事は、2020年3月7日(土)に公開されたものです。

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記事提供:文春オンライン

2020.03.20(金)
文=吉村泰典(慶應義塾大学名誉教授)