日常生活に支障をきたす
女性ホルモンの変動

 「30代以降の女性は、ライフステージでは心身ともに性成熟期の年代ですが、女性の生き方の選択肢が広がった現代では、月経痛、過多月経、月経不順、月経前症候群などの月経トラブルが多くなっています」と話す産婦人科医の篠𥔎百合子先生。

 中でも月経前症候群=PMS(Premenstrual Syndrome)は、日常生活に支障をきたすほど症状が重いことがあるのに、さまざまな症状が表れるのでPMSと認知されていないことが多いそう。

「PMSは、月経の1週間~10日前、軽い人では2~3日前から症状が表れ、月経が始まると治まるものです」

 症状は、精神症状と身体症状に分かれるが、精神症状で困っている場合のほうが多いのだという。

「精神症状では、集中できずいつも通りに仕事ができない、イライラして周囲や家族に当たり散らしてしまい落ち込むなど。身体症状では、むくみや肌荒れ、過食などを訴える人が目立ちます。PMSの原因は不明ですが、軽い身体症状を含めると若い女性の60~70%に見られるといわれています。その中でも、5~20%が日常生活や仕事に支障をきたすと感じています」

 PMSは、治療で改善できるので婦人科に相談してほしいという。

「低用量ピルの服用で症状が改善します。もともとは経口避妊薬ですが、女性の体にとって、副効用があるので、上手に利用してほしい」

 ピル=副作用というイメージを持っている人も多いと思うが、低用量ピルの副効用とはどんなものなのだろう。低用量ピルには、エストロゲンとプロゲステロンの2種類の合成ホルモンが含まれ、排卵を止めることで卵巣が休みの状態になるので避妊ができる。このとき女性ホルモンの増減の波は、平坦な状態になる。

「女性の体は、生む性なので、毎月排卵して妊娠のスタンバイ状態を行っています。女性ホルモンのエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)は、その周期によって増減しますが、特に排卵の後は、大きなホルモンの波が起こります。変動の波が平坦になることで、PMS症状が治まります」

 このピルの服用で月経痛が軽くなり、量も減り、周期も順調になり、月経トラブルも減っていく。

「さらに子宮内膜も薄い状態を保つことになり、子宮内膜症の改善にもつながります。子宮体がん、
卵巣がんへの予防効果も疫学的に証明されています」

 日本で低用量ピルが経口避妊薬として認可されたのが1999年だが、以来20年が経っているのに、そのメリットが認知されていないのは残念だと話す篠𥔎先生。

「晩婚化で出産年齢が上がり、生まない選択をされる方も多い。女性は、月経の負担だけを重ねています。心身のリラックスを心がけ、自分の体を上手にコントロールすることが、女性としての幸せを生きることになると思います」

2019.06.06(木)
Text=Kaoko Saga(Lasant)

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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

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