「それ、中尊寺」でイケると思った

――あの登場場面で自分たちを見失ってしまうという話を、よく聞きますもんね。

南條 舞台裏はとても暗くて、舞台に出る瞬間にパッと目の前が明るくなるんです。

 スタジオのセットが金色なので、むちゃくちゃ明るく見えるんです。暗闇から光の中へブワーッと出る感じで。確かに、あそこでリズムが狂っちゃう人はいるでしょうね。

――そこへ行くと、お2人は、実に堂々たるネタ披露でした。「すゑひろがりずと申します」という最初の自己紹介から、とてもよく声が出ていたように思います。

三島 一発目、いい声が出て、最初のつかみで「合コン……豪華なる金色堂の略」「それ、中尊寺」というところがあるんですけど、そこの返り(笑い)が割とあったんで、僕はそこから一気に自分の領域に飛び込めた感じがしましたね。

南條 確かにネタの出来は一番よかったと思いますわ。

――ただ、一度、南條さんは、小鼓を叩き損ねたんですよね。

南條 はい、紐が革の前に垂れていて、一緒に叩いてしまったんです。そうしたら、変な音になってしまって……。

――あれは、やっぱり調子が狂うものですか。

南條 むちゃくちゃ狂います。いちばん大事なところで“ツッコミ噛む”ぐらいの感覚ですよ。

 うまく鳴らないと、お客さん、ほんまに笑わないですから。あの時も変な空気になって焦りましたね。

 ただ、そのあとはネタに集中できたので、そこまでの大怪我にはなりませんでしたけど。

「みなさま、よいお年を! ポンっ!」

――結果3位になって最終決戦のための「暫定ボックス」に席を確保したわけですが、直後、からし蓮根に抜かれてしまいました。スタジオを去る時の「みなさま、よいお年を! ポンっ!(小鼓の音)」が素敵でしたね。

南條 あっこだけは、5日前ぐらいから考えてたもんな。

三島 負けたとき、なんて言おうかって。

――一昨年のように大会が12月頭だとちょっと早過ぎますけど、22日と年末の空気感になっていたので見事にはまりましたね。

南條 そうそう。ちょい早ぐらいで、今田さんに「いやちょっと早いです、締めるのが(笑)」と突っ込まれて。

 ネタだけでなく、今田さんや審査員との絡みも込みで見られてる感じがしたんで、そこがすごい不安やったんですけど、うまいこと切り抜けられましたね。

すゑひろがりず

三島達也(ボケ&扇子担当)と南條庄助(ツッコミ&小鼓担当)のコンビ。三島は1982年10月2日大阪府出身。南條は1982年6月3日大阪府出身。大阪NSC28期の同期生。

別々のコンビを経て2011年に結成。14年、東京に活動拠点を移す。14、15年にキングオブコントで準決勝進出。コンビ名は当初「みなみのしま」だったが、芸風に合っていなかったため、16年に和風でめでたい意味を込めた「すゑひろがりず」に改名。16年、18年にM-1準々決勝進出。19年初のM-1決勝で8位に。

※こちらの記事は、2020年2月16日(日)に公開されたものです。

記事提供:文春オンライン

2020.02.28(金)
文=中村 計
撮影=山元茂樹