ガラス扉一面が開くグランドルームで
森とともに爽やかな朝食を

 宿泊に朝食はついていますが、夕食はありません。リクエストがあれば地元の滋味あふれる食材を使いながら、ディナーも用意してくれます(要予約)。

 また、ホアン氏はこのホテルでゲストたちに「Get communityして欲しい」と言います。

 そのためホアン氏は坂氏に「人と人が繋がる空間」を依頼。たとえば食事は1階の“グランドルーム”で取ります。

 客室である"ゲストルーム"から"リビングルーム"、そして"グランドルーム"へとゲストを誘導し、無理なく人々が出会えるように演出されています。

 日本と自然を愛し、「これまで自分自身がいろいろな人に助けられたからこそ、人と人はコネクトして欲しい」と強く願うホアン氏。ホテルを建てる際、ニューヨークの有名な建築家など数名に会ったけれど「自分の意図をもっとも深く理解してくれたのが坂氏だった」と語ります。

 「世界中のホテルにステイしながら気持ち良さの真髄を、このししいわハウスで表現したかった。たとえ総工費が高くなろうと、持続ある快適さを坂さんに追求してもらいました。

 何度もやり直しを伝えたけれども、打つと響くように返ってくる。これが世界に名立たるニッポン人か! 凄いなぁと実感しましたよ(笑)」とホアン氏。

 一方、このプロジェクトに携わった坂 茂事務所の佐野俊太郎氏は

「これほど木材を使うプロジェクトは、うちの事務所でも数少ないです。曲線を描きながら幾度もパースをおこし、加えて軽井沢の厳しい建築基準を満たすのは大変なこと。通常より3倍以上の人手と工期がかかりました。

 木材だとメインテナンスが難しそうとよくいわれますが、ついた傷も味になるような仕上がりです。数年後には色も変わってくるでしょうが、それも今から楽しみですね」

 両氏の愛と信念が満ちる「ししいわハウス」。格式高い"ホテル"というより、"ハウス"といったネーミングがぴったりです。

 心地よさの秘密を「なるほど」と頭で理解した矢先、ホアン氏からびっくり発言が。「この近くにもう2軒、建てるんですよ」。なぬっ!?

 「桜をたくさん植えた敷地も考えています」。なんと! ししいわヴィレッジオープン!?

  ホアン氏がこの地を愛おしく思う気持ちは、まだまだ溢れんばかり。新ホテルは既にプリツカー賞受賞の西沢立衛氏に依頼済み。「数年後を楽しみにしていてください」と、ほほ笑むホアン氏に期待するほかありません。

ししいわハウス

所在地 長野県北佐久郡軽井沢町長倉2147-646
電話番号 080-7691-6020
宿泊費 35,640円~(1室2名利用、税・サ別)
http://www.shishiiwahouse.jp/

2020.01.03(金)
文=CREA WEB編集部
撮影=佐藤 亘