料理を「作らない・作れない」ことに罪悪感を持っている人に贈る、ベテランフードライター・白央篤司さんの金言&レシピ。
冷凍食品にちょい足しするのも立派な自炊。簡単なことから始めてみませんか?
このごろよく思うことがあります。それは、世の中って「料理は楽しい」ってメッセージがどうにも……供給過多なんじゃないか、と。
いや、料理には確かに楽しさも面白さもふんだんにあるし、私も好きなんですよ。ただね、「料理=楽しい」って前提が「決定的なもの」になりすぎてるように感じるんです。
世の中って料理好きも多いけど、それと同じぐらい嫌い……とまではいかずとも、そこまでじゃない、あまり興味をもてないって人もいるってこと、忘れたくない。
そういうタイプの人にとって「料理=楽しい!」って発信の多さは、ちょっとしんどくなるんじゃないかなと。実際にそういう声もよく聞きますしね。「楽しく思えない自分って……変わってるのかな」って。全然そんなことないですよ。
私は料理って「合う・合わない」だと思っています。たとえば体育や数学がどうにも合わない、興味が持てない人がいるのと同じように、料理も相性。そして料理が合わない人は、男女問わず少数派じゃないというのがこれまで取材してきた私の実感です。
けれど世の中って
「料理ってこんなに面白い」
「料理はあなたの人生を豊かにしてくれる」
「料理したものを愛する人が食べてくれて喜んでくれる、こんな素敵なことはない」
みたいなセリフが毎日発信されている。ああ、No Cooking, No Life! 「料理=楽しい」に対して「私はそうでもない」ってすごく言いにくい雰囲気ありませんか?
そこがね、私は引っかかるんです。「私はそうでもない」っていうのも、「料理=楽しい」と同じぐらいラクに言えるような空気感が普通になったら理想的なのになあ、って思うんですよ。
「料理、大好き!」という人と「料理はしない」という人、その中間層に向けた情報がもっともっと必要だと思うんですね。その層にとって便利な、ちょっと気持ちがラクになれるような記事を作っていきたいと考えています。
2019.09.18(水)
文=白央篤司