村上虹郎、中島健人という
大きな存在

――続いて撮影されたのが『ナミヤ雑貨店の奇蹟』。こちらはいわゆる松竹のメジャー作品でした。

 最初の作品がインディーズ(自主制作)の『菊とギロチン』で、本当に良かったと思うんです。これまで見てきた父の撮影現場とは違う、低予算ゆえの独特の空気感も刺激的でしたし、インディーズの良さも知ることができました。その経験を踏まえての『ナミヤ』の現場だったわけですが、ここではセット撮影という初めての経験をさせてもらいました。また、同世代の山田涼介くんや村上虹郎くんと一緒に芝居をやるのも新鮮でしたし、慣れ合いにならない距離感も自分に合っていました。虹郎とはその後も食事にも行くような関係で、境遇も似ているし、本質なところは近いと思うんです。だからこそ、僕のなかではかなり意識している同志といえる存在ですね。

――そして、同年人気アニメ原作の実写版である『心が叫びたがってるんだ。』に出演されます。

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 アニメ原作の実写化ということで、まだまだ経験不足の自分のなかでは、どこかで葛藤していました。青春群像劇のなかで、アニメでは表現できなかった人間らしさが出せるのか? と。でも、僕が思っていた以上に難しいものではなかった気がします。それに中島健人くん、芳根京子さん、石井杏奈さんといった共演者のおかげで、とても心地良い時間を過ごすことができました。去年、中島くんのドラマ「ドロ刑 -警視庁捜査三課-」にゲスト出演させてもらったんです。それが僕にとって、初めてのゴールデン(タイム)のドラマで、撮り方など、いろいろ戸惑うことがあったんですが、中島くんには気持ちのうえで、いろいろ助けてもらいました。彼は僕のなかで、数少ない友達といえる存在です。

~次回は、初主演映画『君がまた走り出すとき』などについて語っていただきます~

寛一郎(かんいちろう)

1996年8月16日生まれ。東京都出身。俳優・佐藤浩市を父に、三國連太郎を祖父に持つ。18歳のとき、俳優になることを決意し、17年『心が叫びたがってるんだ。』で俳優デビュー。『ナミヤ雑貨店の奇蹟』では、第27回日本映画批評家大賞新人男優賞を、『菊とギロチン』で第92回キネマ旬報ベスト・テン新人男優賞、第33回高崎映画祭最優秀新進俳優賞を受賞。また、出演作『雪子さんの足音』が静岡先行公開中。

『君がまた走り出すとき』

犯罪に手を染め、警察に追われて逃げこんだ民家で老婦人・多笑(松原智恵子)に、亡き孫と勘違いされた翔太(寛一郎)。成り行き上、その家に住むことになる彼だったが、数日後に訪ねてきた多笑の孫・佳織(山下リオ)と鉢合わせに。その後、彼はラジオで地元市民ランナーの話題を聞いたことで、マラソン大会に参加することに。
MOVIX川口にて、川口先行公開中。3月2日(土)より、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー
http://kimimata.com/
(C)2018 川口市

くれい響 (くれい ひびき)

1971年東京都出身。映画評論家。幼少時代から映画館に通い、大学在学中にクイズ番組「カルトQ」(B級映画の回)で優勝。その後、バラエティ番組制作を経て、「映画秘宝」(洋泉社)編集部員からフリーに。映画誌・情報誌のほか、劇場プログラムなどにも寄稿。

Column

厳選「いい男」大図鑑

 映画や舞台、ドラマ、CMなどで活躍する「いい男」たちに、映画評論家のくれい響さんが直撃インタビュー。デビューのきっかけから、最新作についてのエピソードまで、ぐっと迫ります。

2019.02.22(金)
文=くれい響
写真=榎本麻美
ヘア&メイク=升水彩香
スタイリスト=越中春貴(Rim)