愛さずにはいられない
「ONDORISM(オンドリズム)」
有名人SBを発行していたのは、主に雄鶏社、日本ヴォーグ社、ブティック社の三社。実用書としての手芸本を発行する老舗が手がけていた。
発行元と出演タレント・モデルを整理してみたところ、今で言うところの「囲い込み」的な行為は見当たらなく、高嶋政伸のように、三社からそれぞれ1冊ずつのSBに登場している人も見受けられる(この高嶋弟バブルはドラマ「HOTEL」(レギュラー放送は1990~98年)の影響なのか、それも検証したいことのひとつである)。
![姉さん、「セーター」です。屈託のない笑顔の高嶋弟。『高嶋政伸が着る彼のニット』(ブティック社)。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/8/5/-/img_859b6606720d932eea7db79c91fc5824162890.jpg)
それぞれの出版社が手がけるSBの中でも、特に雄鶏社のSBにおける観音開きページがやばい。
![『大周クンみたいなセーター 加勢大周』(雄鶏社)。セーターを着ていない加勢大周の革ジャンとTシャツ姿のタテ型ピンナップ(サイン入り)ページもあった。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/a/5/-/img_a57bd02dc87ec6975316c9edabcf4801192669.jpg)
もはやここはフリーのページなのか、本来の目的であるセーターとは全く関係のない世界が展開されている。このページの構成を考える仕事だけして暮らしていたい……。そんな夢さえも生まれてしまうSBの魅力よ。ああ、果てしない。
![観音開きのページでは、バックハンドとフォアハンドのラケットの持ち方を詳しくレッスンしてくれる松岡修造。『テニス&セータースケッチ 松岡修造』(雄鶏社)。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/6/e/-/img_6e113bc7cde54e998a77f45cdd0dae65152725.jpg)
観音開きページはとにかく自由。雄鶏社によるSBの自由過ぎるこのやり方を我々は愛を込めて“ONDORISM(オンドリズム)”と名付けた(勝手に)。
しかしながら、この自由なページをほぼ毎回作っていた雄鶏社は2009年に倒産。もう新たなONDORISMを肌で感じることはできなくなってしまったのである、無念。
雄鶏社といえば、もうひとつ。“雄鶏社ONLY”こと、SBを雄鶏社から3冊も出していた風間トオルのそれは目を見張るものがある。そのコンセプトや構成が本当に華やかで洗練されているのだ。
![ヘリコプターの元に寝転ぶ風間トオルなどお宝ショットの観音開きのページ。『風間トオル’91CITY』『僕らのセーターアイランド 風間トオルと仲間たち』(ともに雄鶏社)より。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/4/e/-/img_4e72f614040fa3fe6daa5b89542a0615233009.jpg)
モデル仲間たちとホテルで最高に楽しげなトオル(だって、ホテルのプールで騎馬戦をしてしまうレベル)。そして、タンクトップ型などのアバンギャルドなニットたちが登場。
その本のタイトルどおり、私たちはあっさりとトオル国王が治める“セーターアイランド”の住人になってしまうのだ。そのくらいキラキラしているし、ページを飾るトオルが俄然カッコいい!
![水の中でもセーターを着てしまうのがアイランド住人の掟。『風間トオル セーターアイランド』(雄鶏社)。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/b/c/-/img_bc878c7b3fed4b0cb922469b9e772ca8144264.jpg)
となると「過去にSBを作っていた人に会ってみたい!」、そんな欲望が沸々とわいてきたのは言うまでもない。人間なんて欲望の塊なのである。
現在も「毛糸だま」など、多くのセーター実用書を発行している日本ヴォーグ社さんにその狂った眼差しを注ぐ流れに……。
ということで次回は、平成の最後になってついに動き出す我々(え? 遅い?)。
第2回「手芸書の殿堂こと“日本ヴォーグ社”へ行ってきた!」をお楽しみに。
![](https://crea.ismcdn.jp/common/images/blank.gif)
今振り返る “セーターブック”の世界
2019.02.05(火)
構成=水野春奈
撮影=平松市聖
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