幻のデュオ「ケンちゃんトコちゃん」
その後、雑誌の対談でお会いするなどしてだんだん打ち解けました。実際に話をすると、大阪のどこどこのホルモン焼が美味しいなんてことを教えてくれる。楽曲のイメージとは違って、気さくなんです。
「ケンちゃんトコちゃん」なるデュオを組もうなんて盛り上がったりしたこともあります。ちなみに「ケンちゃんトコちゃん」というのは、70年代初頭に放送されていた実在の児童向けTVドラマのタイトル(笑)。
なお、クリスマスシーズンに開かれる彼女のコンサートでは、クレイジーケンバンドの「クリスマスなんて大嫌い!!なんちゃって♥」を歌ってくれていたそう。ありがたいことです。
古内さんの綴る歌詞はというと、恋愛感情を抱いていた男性が、自分の友達と付き合ってしまうような、ちょっとねじれた内容のものが多い。上品な嫉妬プレイ。スタイリッシュなサウンドなのに歌詞は生々しい。そこに惹かれます。
彼女の歌を聴くと、90年代に日本でも活躍した香港の歌姫、サンディ・ラムのほどよく濡れた歌声を思い出します。
華僑系シンガポール人ミュージシャン、ディック・リーがサンディ・ラムとデュエットした「ラヴァーズ・ティアーズ」という曲があります。香港で親しまれているスタンダード「情人的眼涙」を、90年代初頭にこの2人が装いも新たにカバーしたものなんですが、このヴァージョンを、さらに古内さんにカバーしてもらいたいですね、できることならば本家のディック・リーと一緒に。
彼女にカバーしてほしい楽曲について考えると、何だか楽しくなってきます。例えば、アリーヤの「エイジ・エイント・ナッシング・バット・ア・ナンバー」なんかはどうだろう?
「年齢なんてただの数字でしかないわ」と訴えるこの曲は、当時15歳の若さだったアリーヤが歌うことに意味があったわけだけれど、40代半ばを迎え、お子さんもいらっしゃる古内さんが今歌うと、また逆の深いメッセージが生まれるはず。
自分が今、もしも彼女をプロデュースできるなら? 音数の少ない、跳ねたジャズファンク的な楽曲をSuchmosみたいなサウンドでやったら、さぞかしカッコいいんじゃないかと思いますね。
Column
横山剣の「俺の好きな女」
東洋一のサウンド・マシーン、クレイジーケンバンドを率いる横山剣さん。その常人の域を超えた旺盛なクリエイティヴィティにインスピレーションを与える源泉のひとつが、魅力的な女性たちの存在。これまでの人生で恋し憧れてきた、古今東西の素敵な女性について熱く語ります!
2018.07.07(土)
構成=下井草 秀(文化デリック)