東洋一のサウンド・マシーン、クレイジーケンバンドを率いる横山剣さん。その常人の域を超えた旺盛なクリエイティヴィティにインスピレーションを与える源泉のひとつが、魅力的な女性たちの存在。これまでの人生で恋し憧れてきた、古今東西の素敵な女性について熱く語ります!

#001 野宮真貴

(C)文藝春秋

野宮真貴(のみや まき)
1981年、シングル「女ともだち」でソロデビュー。82年にはポータブル・ロックを結成。90年、3代目のヴォーカリストとしてピチカート・ファイヴに参加し、2001年の解散までワールドワイドな活動を続ける。その後はソロに転じ、音楽活動のみならず、ファッションに関するプロデュースなど多方面で活躍。著書に『おしゃれはほどほどでいい 「最高の私」は「最少の努力」で作る』(幻冬舎)などがある。

普段は親しみやすいのに
舞台に上がると別人に変わる

 僕が最初に野宮真貴さんの存在を知ったのは、1980年代初めのこと。ソロデビューアルバム『ピンクの心』や、その後に加入したポータブル・ロックというバンドのアルバムに、まずは興味を惹かれました。

 そして、決定的だったのはピチカート・ファイヴの衝撃。ピチカートは、初代ヴォーカリストの佐々木麻美子さんが在籍している時代から好きだったんですが、その後任の田島貴男さんを経て、90年に野宮さんを迎えた時、完成に至ったという印象を受けました。

 小西康陽さんと高浪敬太郎さんが作る音楽はもちろん、信藤三雄さんの手がけるアートワークとも、相性がぴったりでした。子どもの頃の僕が好きだった、モデルのツイッギーにも通じる美学がある。

 初めてお会いすることができたのは、2000年。ピチカート・ファイヴがレギュラーを務めていたTOKYO FMのラジオ番組「Readymade FM」に、僕がゲストとして招かれたんです。

 あれだけ美しくて多才な人なのに、感じがいい。控えめで、すごく親しみやすいんです。なのに、いざステージに上がると、スイッチが入って、別人になる。

 表情から動きから、そのすべてがスタイリッシュでチャーミング。声が素敵で、しゃべり方もアナウンサーみたいに滑舌がいい。実はピチカート・ファイヴのサウンドというのはかなりラウドだったんだけど、その大きな音の中でも、ちゃんと声が抜けて聴こえるんです。そこがすごい。

 ああいうファンタジーというか、浮世離れしたキャラクターなら、普通はプライベートを必死に隠そうとしてもおかしくないのに、まったくそんな気負いはない。

 僕と同じ60年生まれであることも公表してるし、結婚してることも、お子さんがいることも、隠していない。何でも、息子さんはもう、医学部に通う大学生!

2018.04.28(土)
構成=下井草 秀(文化デリック)