“ミスター・アメリカン・ナイーブ”?

【日本盤】トム・スノウ『ハングリー・ナイツ』(1982年)

電話をするには近すぎる
ノックをするにも勇気が要る
もう何本めのタバコだろうか
今夜も眠れぬ夜になりそうだ

喜び上手、悲しみ上手のあなた、シャンペンとハンカチーフの御用意を。
彼はまさしくミスター・アメリカン・ナイーブなのですから。

 今回のコラムの最後を締めくくるのは、作家として活躍していたトム・スノウの1982年の作品だ。

 これは何よりも帯のキャッチコピーが強烈だろう。本人が見てないからって、やりすぎではないだろうか。海の向こうで勝手に“ミスター・アメリカン・ナイーブ”に認定されてしまったトム・スノウさんの気持ちも考えてほしいと思う。

 また、文章の長さもなかなかのモノで、筆者が帯の文章を紹介するために運営しているTwitterのbot(自動投稿システム)では、文字数制限に引っかかってしまい全文を投稿できない稀有なケースだったりする。

【オリジナル盤】Tom Snow“Hungry Nights”(1982年)

 アルバムのジャケットは、オリジナルのオジサンも、差し替えられた夜景も、1つ前に紹介したポール・デイヴィス『クール・ナイト』と非常に似ており、同じ担当者の仕事だと思われる。

 当時の担当者ごとの「クセ」に注目して観察してみる、というのもAOR帯文学の1つの楽しみ方だったりするのだ。

 こんなコラムを書いておいてアレなのだが、作品自体は爽やかなタイトル曲「Hungry Nights」からメロウなバラード「Time Of Our Lives」まで、クセのあるソングライティングが楽しめるので、帯に興味を持っていただけたのなら、この機会にぜひ聴いてみてほしいと思う。

福田直木(ふくだ なおき)
1992年生まれ。東京都出身。AORやフュージョンを中心に聴き漁る音楽好き。学生時代にはピアノとドラムを習っていたがあまり長続きせず、DTMに熱中したことで作曲に目覚める。自身の所属する音楽ユニット、ブルー・ペパーズでは作編曲やボーカルなどを担当。趣味はカレー屋巡りとレコードの帯の蒐集。千葉ロッテファン。
Twitter https://twitter.com/danaoki0917

ブルー・ペパーズ
東京都在住の福田直木と井上薫による音楽ユニット。大学生時代の2015年に発表した『ブルー・ペパーズ EP』でデビュー。他アーティストへの楽曲提供などを経て、2017年11月に1stフルアルバム『RETROACTIVE』をリリース。AOR、ジャズ、フュージョン、ラテンなど様々なジャンルを追究し、それらのエッセンスを盛り込みつつも「聴きやすいポップス音楽」というフォーマットに落とし込むバランス感覚を大切にしている。
公式サイト http://bluepeppers.tokyo/

ブルー・ペパーズ『RETROACTIVE』
待望の1stフルアルバムには、これまでの作品でもおなじみのヴォーカル・佐々木詩織に加え、ドラムスの佐野康夫、キーボードの森俊之などベテラン勢も参加。彼らが南波志帆に提供した「コバルトブルー」のセルフカヴァーでは、ヴォーカルに星野みちるをフィーチャー。「ずっと」「秋風のリグレット」「6月の夢」など、既発表曲のアルバムヴァージョンも収録。
VIVID SOUND 発売中
2,500円(税抜)