劇場の入り口で見つかった不審物
そして本編が上映され(フル4K版では撮影の素晴らしさが浮き彫りになり、改めて傑作と確信)、10分以上のスタンディングオベーションに応えるイーストウッドの目には光るものがあり、ラッキーにも近くの席だった私も握手をしてもらい大感激だったのだが、問題はそのあとだ。
イーストウッドも去り、私もドビュッシー・シアターからパレ3階のプレスルームへ移動した。この際も警察犬がうろうろしていたものの、特段騒ぎもなかったのだが、20分ほどして建物を出ようとすると何やら騒然とした雰囲気。追い立てられるように外に出ると、ドビュッシー・シアター入り口で不審なバッグが見つかったというのだ。ひーっ。
あらゆる場所を警察犬が嗅ぎ回り、銃を抱えた警察、軍隊も出動して、やたらと物々しい雰囲気に。ドビュッシー・シアターでは『許されざる者』が6時半すぎに終ると、すぐに夜7時15分から若き日のゴダールの恋を描く話題作“Redoubtable”のプレス試写が予定されていて、観客が入れ替わったのだが、近くにいた欧米人のプレスによれば、会場に入った途端に警察から退避命令が出たのだと言う。
最終的に、バッグの中身は危険物ではなかったことが確認され、1時間遅れで試写はスタート。しかし翌々日、英国マンチェスターのコンサート会場でテロ事件は起きてしまった。カンヌ映画祭もすぐに「文化イベントへの攻撃は許さない」と声明を発表し、被害者のため、そして英国の人々ために1分間の黙祷が捧げられた。
とはいえ、立ち直りが早いのも映画人の特徴。映画祭は華やかにその後も続いた。マダムアヤコも、もちろんミーハーに取材に励んだのだった。
石津文子のカンヌ追っかけ日記2017
2017.07.02(日)
文・撮影=石津文子
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