ペドロ・アルモドバルが爆弾発言!
ようこそ、カンヌへ!
といいつつ、まったく速報性のないこのコラム。Webの記事は早さだけではない。いつでも読めることにも意味があるんだ、と無理矢理進めていきます。
さて、70回目の節目となったカンヌ映画祭で目立ったのは、テレビやストリーミング配信、VRといった、劇場用映画以外の映像作品。中でもストリーミング配信大手Netflixの作品である、ポン・ジュノの『オクジャ』と、ノア・バームバックの『マイヤーウィッツ家の人々(改訂版)』の2本は、最高賞パルムドールを争うコンペティションに入ったのだが、果たして配信作品は映画なのか、という論争が巻き起こった。
特に舌鋒鋭かったのが、なんと公平を期すはずの審査委員長である、ペドロ・アルモドバル。
『オール・アバウト・マイ・マザー』などで知られるスペインの大物監督が、映画祭初日の記者会見でいきなり、映画館で映画を観るという文化を守るべきだという趣旨の声明文を読み上げ、「個人的には映画館で上映されない作品に賞をあげたくない」とぶち上げたのだ。
委員長が出品作を観る前から否定するようなことを言うもんだから、みんなびっくり。同じく審査員のウィル・スミスが「うちの子どもたちはNetflixも観るけど、映画館にもよく行くよ」なんてフォローしても、アルモドバルはしらっとしていた。
のちに、この発言は行き過ぎだったとして、アルモドバルは撤回したのだが、結局評判は良かったものの『オクジャ』も『マイヤーウィッツ家の人々(改訂版)』も、賞に絡むことはなかった。
スーパーピッグをめぐる大活劇『オクジャ』は日本でも配信されているので、ぜひ観られる人には観てほしいし、アダム・サンドラー、ベン・スティラー、ダスティン・ホフマンが親子を演じる、ノア・バームバックのコメディ『マイヤーウィッツ家の人々(改訂版)』はアカデミー賞に絡むんじゃないかと思っている。一流になりそびれた人たちはどう生きていくか、という題材もぐっときたし、専業主夫の兄役を演じたアダムが特によかった。個人的には、ね。
2017.09.25(月)
文・撮影=石津文子