地中海で「美の島」と呼ばれるコルシカ島と、カンヌ沖合に浮かぶレランス諸島の小島サントノラ島。フランスのワインでありながら、表舞台にはあまり登場することがないこれらのワインの産地を、食とともに訪ねます。
今回は、美しい海と緑に恵まれた「修道院の島」、サントノラ島のワインをご案内します。
タイムスリップしたかのような「修道院の島」
高級リゾート地として、または世界的な映画祭の開催地としてその名を知られるカンヌの沖合に、小さな島々からなるレランス諸島があります。そのひとつが、サントノラ島。
カンヌの港から連絡船で約30分、長さ1.5キロ、幅0.5キロ、面積約40ヘクタール。ゆっくり散策しても2時間もあれば島を1周できてしまうこの小さな島にあるのは、レランス修道院だけ。この島が「修道院の島」と呼ばれるゆえんです。ここでは今でも修道士(モワンヌ)たちが神に祈りを捧げながら共同生活を行い、自ら育てたブドウでワイン造りをしています。
右:回廊に咲く美しい藤の花。季節ごとに色々な花や緑に囲まれます。
この島の歴史は、400年頃にオノラという名の修道士がカトリック修道院を建てたことに始まり、現在はアントワーヌ神父を含めた21名の修道士が暮らしています。
今回は、レランス修道院の広報を担当する、サミュエル・ブトンさんが島の紹介をしてくれました。
右:優しい人柄のアントワーヌ神父。
カンヌからの船が着く港は、島の北側。そこから、ブドウ畑を左右に見ながら7~8分ほど歩くともう島の反対側です。そこには、長い歴史を感じさせる建物「Monastère fortifié(要塞修道院)」が海に張り出すように立っています。
11世紀頃は海賊の襲来が激しく、修道士たちの避難場所として防衛設備を備えた修道院が必要となり、作られました。祈りの場をはじめ、台所、寝室、図書室などを備えているものの、飾り気もなく厳格な印象。俗世から離れ、ひたすら神に身を捧げる修道士たちの様子を今に伝えています。
2016.09.18(日)
文・撮影=須藤みほこ