火山の恵み、エトナ山のワイン造りを間近で

約3323mの活火山・世界遺産エトナ山の斜面は目下注目度No.1のワイン名産地。

 シチリア島東岸のランドマーク・雄峰エトナは、現在も活発な噴火活動が続く、地中海エリア最大の活火山。白い煙を青空にたなびかせる山頂火口からは、時折、真っ赤な溶岩を噴き出すことも! 地球のパワーみなぎる世界自然遺産ですが、50万年以上続く火山活動によって得られた肥沃な大地がもたらす美味の宝庫でもあり、特にワインは、注目度の高いシチリアワインのなかでもとりわけ熱い注目を集めています。

自然派ワインの旗手フランク・コーネリッセン氏の極上ワイン「マグマ」が生まれる畑。伝統的なアルベレッロ方式で、一本一本独立して栽培。除草剤を使わないため、栄養豊富な畑は雑草との戦いだ。

 古代ギリシャ時代から伝統的なワイン産地でありながら、斜面を利用した段々畑での栽培の困難さから、大量生産時代には世界の表舞台から姿を消していたエトナ山産のワイン。しかし、1900年代後半から、ミネラル豊富な火山性土壌、昼夜の寒暖差がある冷涼な高地、外界との接触が少ない環境のため害虫フィロキセラに浸されなかった樹木……、そのポテンシャルに可能性を見出した醸造家たちによって復活を遂げ、次々と珠玉のワインが生み出されているのです。

「フランク・コーネリッセン」のワイナリー。エトナ山の溶岩を練り込んだ石とガラス加工を施したアンフォラで熟成。

 エトナワインの中心地といえば、山の北側斜面。復活の立役者アンドレア・フランケッティ氏の「パッソピッシャーロ」、超自然派ワインの旗手フランク・コーネリッセン氏の「アジエンダ・アグリコラ・フランク・コーネリッセン」など、スター生産者のワイナリーが標高600~1000メートルの高地にひしめいています。この北側斜面の醸造所めぐりは、ワイン好きなら一度はしてみたいもの……。

山麓にあるピエディモンテ駅に停車中のワイン列車。ワイン好きを乗せて、話題のエトナワインの中心地へ!

 さて、そんなエトナ山界隈に「ワイン列車」なるものが登場し、ひそかな話題を呼んでいます。エトナ周遊鉄道、エトナワイン街道協会、ワイナリー各社の共同でスタートした新企画で、リングアグロッサ、ロヴィテッロ、パッソピシャーロ、ランダッツォなど、マニア垂涎のエリアを通ります。

文・撮影=岩田デノーラ砂和子