vol.23 ペルー(4)
間違いなく感動の震えがやってくる料理
前回の「Malabar」の支店である「ÁMAZ」は、高級住宅街ミラ・フローレス地区にある。アマゾン原住民の家を模したと思われる竹籠のような骨組みで分けられた客席が、エキゾチックである。
アマゾンの食材と郷土料理に敬意を払った料理店で、「Malabar」より郷土色が強く、ある意味でマニアックであるが、奇異な感じは微塵もない。どの皿も味付けが穏やかで、郷土料理に共通する、毎日食べても飽きない優しさと土に根ざした不動の力強さを感じさせる。
虚心坦懐にして食べれば、間違いなく感動の震えがやってくる。もしリマで、ペルー食文化の刺激を得たければ「ガストンアグリオ」や「maido」、「セントラル」より、真っ先に訪れるべき店である。
では、恐らく日本では初公開となる、その多彩で未知なる美味の数々をご紹介したい。
●「CHEF'S EMPANADA アヒ・チャラピートとココのソース」
アマゾンの叉焼饅頭風。香ばしくサクッと弾ける皮の中には、甘辛く味付けしたセシーナ(ベーコン)と玉葱が詰められている。唐辛子のうま味と辛味、フルーツの香りと甘酸味が溶けたソースが添えられるので、それを、噛み口辺りにかけて食べると、おいしいぞ。
●「CEVICHE NATURAL(ヴェジタリアン・セビーチェ)」
セビーチェというと魚料理がメジャーだが、このように野菜や肉でも作る。構成は、斜めに切ったパルミット(椰子の芽)の芯と先っちょの薄切り、紫玉葱、胡瓜、あまり辛くない唐辛子、アボカド。
なによりもパルミットが素晴らしい。噛むとパシュッと勢い良くジュースが弾け、みずみずしさに目を細める。香りの少ない穫りたてのホワイトアスパラの生のようでもあり、食べていくと逃げていきそうな弱々しい甘みに心を焦らされる。
酸味と塩味のバランスがとれ、うま味がほどよいレッチェドタイガー(セビーチェの漬け汁・虎のミルクと呼ぶ)の味わいもよく、上品なあまり辛くないソムタムといった風でもある。
●「EMPANADAS DE YUCA VEGGIE(ユカ[キャッサバ]粉のさつま揚げ)」
生地が甘いお好み焼きといった感じの味わいで、ほのぼのとする。
●「PLANTAIN AND “QUESO SERRANO”」
バナナの上にアンデスチーズを乗せたスナック。そのまんまの素朴な味わいである。
●「PACAMOTO DE CAMARONES TARAPOTINOS」
竹筒に入れ、葉で蓋をしてそのまま熱した海老料理。竹筒からノコギリコリアンダーが入れられた木のボウルに流し入れてから食べる。
唐辛子のうまみだろうか。海老の味と優しいうま味が交じりあって、味が丸い。あまり辛くないトムヤムクンの味を想像してみてほしい。だから白い御飯が欲しくなる。
2017.05.04(木)
文・撮影=マッキー牧元