鶏の味が染みた御飯がうまい

●「STEAK DE PAICHE(ピラルクのグリル)」

身は海の白身魚のそれではなく、にじますや鮎に似た拙い繊維質。

 体長3メートル以上になる、世界最大の淡水魚の一つである。「身は世界一美味く、肝は宇宙一美味い」と、結局は釣ることが叶わなかった開高健が、ヤケ気味で叫んだ魚である。それがグリルにされ、皿の中央に鎮座されている。

 バナナを炒めてファローファ(キャッサバの粉)をまぶしたものと、黄色い唐辛子のアヒ・チャラピートとココを混ぜたソースが添えられていた。恐らくこいつは体長30センチくらいの小ピラルクだろう。小さいとはいえ、「どうだい人間、俺を食べるか」と聞いてくる迫力があって、さあどこから箸を(この場合フォークだが)つけるかなと、考えさせられる。

 腹身の脂ののっていそうなところをむしってやった。その身は柔らかい。はらりとほぐれて舌の上に乗る。身は海の白身魚のそれではなく、にじますや鮎に似た拙い繊維質である。

 そして噛み締めれば、ほのかな甘みがやってくる。やはり塩水という海水に揉まれた魚と違い、身は川魚のそれである。あの巨大で不気味な魚の肉が、意外にもしなやかで甘みを秘めているところに、開高健は撃たれたのだろうか。

 そんな想像をしながらさらに噛み締めていくと、奥底からそっとエグミが現れ、「舐めちゃいけませんぜ旦那」と言いながら、胃袋に落ちていくのだった。

●「TACACHO ámaZ」

揚げた青バナナと、グリルした豚肉とセシーナ、チチャロン。

 つぶしてから団子にして揚げた青バナナと、グリルした豚肉とセシーナ、チチャロン(豚皮の揚げたもの)。いやあこういう料理はまいってしまうのですね。しっかり運動しただろうと想像できる豚は噛む喜びがあって、熟成されたうま味の喜びがあるセシーナや豚皮のカリカリと脂のお下品さにバナナの甘さ。下手の迫力と食材の力強さが、胃袋をがっちりとつかむ。

●「JUANE DE POLLO」

BIJAO(ビハウ)という葉っぱに米と鶏肉を入れて蒸した、アマゾンの伝統料理。

 BIJAO(ビハウ)という葉っぱに米と鶏肉を入れて蒸した、アマゾンの伝統料理。これは粽ですな。鶏の味が染みた御飯がうまいが、なぜか餅米のような食感なのです。

鶏の味が染みた御飯がうまい。

●「PATARASHCA」

BIJAOの包み焼き伝統料理。

 パタラシュカというBIJAOの包み焼き伝統料理。ここではトマト玉葱を入れて魚をアクアパッツァ的に蒸し上げるが、本来は塩だけ振って魚を包み焼く料理だという。

 本日の魚は、あの開高健がその獰猛な暴れ具合に熱狂したドラドである。川魚なれど活発で獰猛なのだろう、強いて言えばイサキに似た身質で、トマト味と相まって舌に迫ってくる。さらにに黄色いチリペッパーソースをかけて食べたら、なおうまし。鼻息が荒くなる。

2017.05.04(木)
文・撮影=マッキー牧元