vol.20 ペルー(1)

「ベスト50レストラン」の30位以内に
首都リマから3軒がランクイン

 「ペルーに行く」というと大抵の人は、「どんな料理?」「料理っておいしいの?」と聞いてくる。

 だが、実は今、食の世界で最も注目されているのがペルーなのである。

 食通やシェフ達が選ぶ「ベスト50レストラン」の30位以内に、ペルーのリマから3軒選ばれている。他に3軒選ばれているのは、米国とスペインだけであるから、いかに美食文化度が高いかわかるだろう。

 その美食を支えているのは、食材の豊かさにある。日本の3.4倍という広大な土地の6割はアマゾン川を源流とする熱帯雨林で、3割はアンデス山脈を背にした山岳地帯である。

 西側には、プラクトン豊富な海を擁す、3000キロもの長い海岸線があり、海岸砂漠地帯を含めた、バラエティに富んだ気候風土は、多種多様な植物を育んできた。

美食を支えている食材の豊かさ。トマト、紫玉ねぎ、人参以外は全てじゃがいも。八百屋にて。

 トマト、ジャガイモ、カボチャ、サツマイモ、唐辛子、トウモロコシ、ピーナッツ、パッションフルーツ、キノア、タバコなど、アンデス原産とされる植物は多く、現在世界で常食されている食物の約20%が、アンデス原産であるという。

 僕がペルーで食べ歩いて、初めて出会った食材を数えたら、なんと50種類にも及んだ。世界中でこんな国はない。

 ちなみに上げてみると、肉類は、クイ、天竺鼠、アルパカ。魚介類は、ドラド、ピラルクー、コルビナ(オオニベ)、ペヘレイ、アブラソコムツ、クシュロ(海藻)、チュロ(巻貝)、ガミタナ(ピラニアの仲間)。

 野菜や根菜は、ビハウ葉、ワカタイ、pacay、huito、フアランゴ(灌木)。イモ類は、マシュア、オカ、オユコ、ガント・フィト、マクィティショ・アスル、ウクシュ、マリポシータ、ユッカ・ブラヴァ、sachapapa、pijuayo、ungrahui、ロチェ(南瓜)、ステヴィア、retama、malva(ウスベニアオイ)、pilipiliとなる。

唐辛子類はロコト、アヒ、リモほか多数で辛さも様々。辛味をとって旨味の元として使われることが多い。

 唐辛子類は、ロコト、アヒ、リモほか多数。その他ブラジルナッツ、tarwi豆、coca、airampo(サボテンの一種)、muna(細長いトマト)、トマティーノ。各種トウモロコシ。

 果物類は、カムカム、ニカンボ、トゥンボ、pepino、ルクマ、タマリロ、チェリモヤ、ワナワナ、カカオ、モカンボ、coconaである。

明らかにマンゴーの香りと食感なのに酸っぱい、マンゴミルグエロ。

 こうした豊富な食材を使い、フランスやNY、スペインで修行したシェフ達が料理を作る。個性的で刺激的な料理となるのは当然の結果だと言えよう。

 ペルーに行ったら、ぜひこうした食材を試してほしい。

 例えば「トシロー」という日系人経営の寿司屋で食べたのは、ペヘレイだった。鮨のネタケースに青魚があったので、「サルディーナ?」と聞くと、「ペヘレイ」と答える。

ペヘレイ。トウゴロイワシの種類で身は、半透明の白、食感はサヨリに近い。

 なんじゃペヘレイは? と思っていると、もう一人のベテランペルー人板前が、「サヨリ」と答える。

 そこで握ってもらった。うむ。サヨリといえばそうだが、もう少し味が淡味で、微かなクセがある。キビナゴのようでもある。

 生姜が効かせてあってケッコウいける。調べてみたら、ペへは魚、レイは王様で、王の魚という立派な意味である。

 天ぷらにするとキスみたいでおいしいらしいという話を聞いて街を歩いていると、ペヘレイバーガーを見つけた。早速食べてみると、淡い甘みがあって品がある。

2017.03.02(木)
文・撮影=マッキー牧元