動植物園の復興委員会に参加します
 文=吉本由美

CREA2016年12月号より。2016年9月には、熊本市内の早川倉庫で朗読やトークなどのイベントを行った。

 地震から約1年が経ち、本格的な復興はこれからという今、みなさんからお預かりした大切なお金を役立てなければと焦っています。同じ県民として多くの被災が気になるけれど、千手観音ではないからすべてに手を差しのべることは難しい。心苦しくも的を絞って、私はひとまず動物関係を受け持ちました。

 動物のことでまず気がかりだったのが被災ペットの保護状況。けれど保護されている場所がいろいろに分かれているため詳細が摑めず、まだ調査中です。できれば動物管理センターの収容頭数過多(のため殺処分も検討されている)の解決に役立てたいのですが、この問題、お金があれば解決するということでもなく、今のところ宙に浮いている。すみません。

 次に、被害が大きく地震以降閉園の続く熊本市動植物園の救済です。義援金とか使い走りとか、何とかお手伝いしたくても、電話も繫がらず、HPも中断したままで、状況がなかなかわからなかった。それで昨年12月、熊本市長・大西一史さんにお目通りいただき、思いを吐露させてもらいました。

 大西市長は快くご理解くださり、4月から始まる“動植物園復興委員会”に参加できることになりました。ここで賢い寄付金の使い道を探ろうと思います。まだまだ先になりますが、どうか長い目で見守っていただけるようお願いします。

イベントプラン募集します
 文=都築響一

 村上さんが文豪漱石、吉本さんが動物園とそれぞれ得意分野へのサポートを選んで、僕の得意分野はと考えると……まさか風俗というわけにもいかず。なので、いちばん好きな音楽でなにかできたらと。

 地震のあとにはさまざまなかたちの復興支援音楽フェスティバルやイベントが開かれましたが、いまは一段落して、また夏のイベント・シーズンに向けてプランがたくさん練られている最中だと思います。

 熊本から遠く離れた東京にいると、アイデアがぐつぐつ煮込まれてる現場の空気はなかなか伝わってこないのがもどかしい。なので「こんなことやります!」というプランを、どんどんクレア編集部まで送っていただけたら、そこからサポートさせていただくイベントを選べるのではないかと考えました。クラシック、ジャズ、ブルース、ロック、パンク、ラップ……ジャンルなんて問いません。もう少しだけ資金があったら最高のイベントになるんだけど、という企画を教えてもらえたら、すごくうれしいです。

 この小説に救われた、この絵に救われた、というのがあるように、この一曲に救われる経験がというのもかならずありうると思うし、一曲のひとカケラに救われることだってある。ジミ・ヘンドリックスのチョーキング一発にだって、カート・コバーンの「ハロー・ハロー・ハウロウ」にだって、ブルーハーブの「未来は俺らの手の中」に救われたひとだって、どれくらいいることか。

 演奏する側と受け取る側がひとつの時間を完全に共有する、音楽というメディアならではの力というものを僕は信じるし、それはどれだけ売れてるかとか有名かとか、そういうのとはぜんぜん別のエネルギーです。

 熊本という磁場から生まれる音のスリル、楽しみにしています!

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村上春樹(むらかみはるき)
1949年、京都府生まれ。79年『風の歌を聴け』でデビュー。最新の長篇小説『騎士団長殺し』「第1部 顕(あらわ)れるイデア編」「第2部 遷(うつ)ろうメタファー編』全2冊が発売中。

吉本由美(よしもとゆみ)
1948年、熊本県生まれ。作家・エッセイストにして『anan』『Olive』『クロワッサン』で活躍したスタイリスト。著書に『みちくさの名前。』など。熊本発の文芸誌『アルテリ』で小説を発表。

都築響一(つづききょういち)
1956年、東京都生まれ。93年『TOKYO STYLE』を発表。96年『ROADSIDE JAPAN』で第23回木村伊兵衛写真賞を受賞。有料メルマガ『ROADSIDERS' weekly』を毎週発行。

CREA〈するめ基金〉熊本

2017.03.07(火)
文=村上春樹、吉本由美、都築響一
撮影=都築響一、平松市聖

CREA 2017年4月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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