オンタリオの食産業を支える熱き学生たち

ナイアガラ・オン・ザ・レイク市にあるナイアガラ大学は、食品・飲料・飲食産業に特化した専門大学だ。

 アメリカに隣接しているナイアガラ地方と、その隣のハミルトン市。ここには、アメリカ国民の膨大な胃袋を支える飲料、食料の巨大な工場がいくつもある。

 アメリカブランドのビールもカナダの巨大ブリュワリーが下請けして醸造していたりするのだ。大量生産された製品は、地の利を生かして、車、鉄道、船で国境を越えてアメリカへ、そして空路でヨーロッパへと輸出されている。

 そんなナイアガラ地方には、食産業を支える人材育成に特化した大学がある。ナイアガラ大学だ。3つの市にある3つのキャンパスのうちのひとつ、オン・ザ・レイク校を訪ねた。

 ここには、カナダ食品ワイン研究所があり、食品、ワイン、ビールに特化した教育、研究を行っている。科学的・学術的な内容から、接客サービスまで、食品・飲料・飲食産業のすべてを学ぶことができるのだ。オンタリオ特集第3回でご紹介した「レフト・フィールド・ブリュワリー」のビール醸造家、オースティン・ローチさんが学んだのもこの大学だ。

商業施設のようにスタイリッシュなバーカウンター。実際の接客を学んでいるのだという。中で接客しているのは学生だ。ここでワインを買うこともできる。
「カレッジ・レッド2013」は、校内で造られた2013年の赤ワイン。その下にブドウ品種が書かれている。シンプルで分かりやすい。

 入り口を入ると、まず目に入るのは円形のスタイリッシュなカウンター。その先の商品棚にはカナダワインがずらりと並んでいる。ガラス窓の先はブドウ畑だ。まずは、ワイングラスが配られ、テイスティングしながら説明を聞くことになった。並んでいるワインの中には、校内で造られたものもある。カウンター内で接客をしている若者たちも学生だ。

ティーチング・ワイナリー。小さな熟成タンクが並んでいる。
温室では、様々な野菜や果物を実際に栽培している。こちらでは、水耕栽培で、根の下に魚を飼育することによる完全循環型の栽培の研究も。

 校内には、小さな熟成タンクが並ぶ「ティーチング・ワイナリー」、醸造タンクが並ぶ「ティーチング・ブリュワリー」を始め、ブドウ畑、ホップ畑、野菜・果物の栽培を研究している温室や、各種化学研究室が整い、世界各地からの留学生も受け入れている。日本からの留学生もいるという。

各研究室を説明してくれるのも、実際にここで学んでいる学生。

 ひと通り校内を見学してからレストランへ。校内で造られたワインとビールをテイスティングさせていただくことに。

左:校内で造られたワイン2種類、ビール2種類をテイスティング。商品化できるレベルだ。前述の通り、実際に校内で販売されている。
右:チーズもジャムも学生たちが学びながら造ったもの。こちらも本格的だ。

 テーブルに出されたチーズも校内で作られたものだし、それらをテーブルに運んでサービスしてくれるのは学生たちだ。どれもプロの味だし、チーズを持ってきてくれた学生に質問すれば、それぞれのチーズの違いをしっかり説明してくれる。ここで熱心に学ぶ学生たちが世に出て行く日がなんとも楽しみだ。

Niagara Collage Niagara-on-the-Lake Campus
(ナイアガラ大学オン・ザ・レイク校)

所在地 135 Taylor Rd, Niagara-on-the-Lake, Ontario L0S 1J0
電話番号 905-735-2211
http://www.niagaracollege.ca/

2017.01.26(木)
文・撮影=たかせ藍沙