鮮烈なエメラルドグリーンの海で透明度も抜群

 2015年秋、初めてシチリアに足を運んだとき、なぜ10年、20年前に来なかったのかと悔いました。イタリア最南端の島。もちろんイタリアの一部ではあるけれども、本土とはあきらかに異なる。

 日本でいうと沖縄の位置づけに少し近いのかもしれません。1回目ではとても見切れなかったこともあり、2016年夏に再びシチリア島の西から東まで横断しました。

 今回はそのなかでも特におすすめしたいポイントにしぼってご紹介したいと思います。

船が宙に浮く?

 東芝のREGZAのコマーシャルで2013年に流れていたもので、福山雅治が小船の上に乗っており、その小船が宙に浮いているように見えるシーンをごぞんじでしょうか。

 この島、実はシチリアの西端にあるファビニャーナ島のCala Rossa(カーラ ロッサ)という入り江なのです。私も福山雅治と同じ体験? をしたくて、ここに行ってまいりました。

 コペンハーゲンからボローニャを経由して、LCCのライアンエアーでシチリア西端のトラーパニ空港に到着。そこから満席の高速船で30分。ファビニャーナの港に到着します。

 ここから入り江までは船をチャーターして入り江に行くこともできますが、それよりも自転車やバイクなどを借りていくことをおすすめします。自転車でゆっくり移動して30分ほどでしょうか。途中に店などはほとんどないので飲み物などを持参しましょう。また、シチリアの日射しは強烈なので日よけ対策も。

 ゆるやかなアップダウンを繰り返しながら、未舗装の道を行くと、ようやくたどりつきました。

 鮮烈なエメラルドグリーンで透明度も申し分ありません。

 ただし、この日はやや風が強く波がたっているために「宙に浮く」船の姿をみることはできませんでした。条件は太陽高度が高い夏の日中で風の穏やかなとき。なかなか福山雅治の域に達するのは難しいことがわかりました。

 ファビニャーナ島はマグロ漁でも有名な島。できれば宿泊して日がな一日のんびり海を眺めていたいものです。

 海を堪能した後は港町トラーパニで腹ごしらえ。地中海交易の要地として栄えたトラーパニの歴史は紀元前8世紀ごろまでさかのぼるといわれています。日本でいうと縄文時代ですね。

 トラーパニで楽しいのは町歩き。腹こなしに散策すると、バロック様式の建築をあちこちで目にします。バロック様式はその過剰さや怪物などの多用から、建築に関する専門的な知識がなくても楽しむことができます。

 トラーパニの名産といえばトラーパニ風魚のクスクス。しかし、せっかくなので魚も何かいただきましょう。厨房から一通りの魚を並べてみせてくれます。

 トラーパニからチュニジアへの距離は、イタリア本土の最南端よりもはるかに近いのです。クスクスをいただきながらそんなことを考えるのも旅の楽しみの一つ。

2016.10.31(月)
文・撮影=橋賀秀紀