ムックよりも冊子型のガイドブックを選ぼう

旅に不可欠な情報源であるガイドブック。歴史や文化などについての概要も短時間に理解でき、重宝する。ただし、その使い方については意外なほど論じられていない。

 かつて、海外旅行ガイドブックの編集をしていました。学生時代にもガイドブックの取材をしたことがあります。

 当時は「旅行を仕事にしているなんていいですね」とよく言われましたが、朝から晩まで1日10軒以上のホテル、博物館、レストランをまわり、夜は資料整理に追われて、毎日午前2時まで寝られません。

 これが毎日続くのですから、「旅行が好き」というだけでは勤まらないハードな仕事でした。

 それでも、ガイドブックの仕事をして初めて分かったこともあります。それはその後の自分が旅行するうえで役立ちました。

 そこで今回は、ガイドブックを取材・編集した経験をもとに、ガイドブックをどのように読み込み、使いこなせばよいのか、合計10のギモンに答える形で実践的なアドバイスをしたいと思います。

 海外旅行のガイドブックを念頭におきましたが、国内旅行のガイドブックにも適用可能です。

(1) ガイドブックをどうやって選ぶのか?

ガイドブックのよしあしを判断する基準のひとつは地図の正確さ。

 書店でガイドブックのコーナーに行くと、さまざまな種類のガイドが置いてあり、どれにすればよいのか迷うこともあると思います。そういう場合は、自分の行きたい国の特定の目的地について、それぞれのガイドがどのくらい細かな記述をしているのか、比較してみることをおすすめします。

 同時に地図がどのくらい正確なのか、同じエリアにどのくらいの情報が盛り込まれているのかどうかもチェックしましょう。

(2) 冊子型ガイドとムックは情報源が同じ?

 私がかつて編集していた現場では、冊子型のガイドブックと雑誌のようなスタイルのムックの両方を発行していました。

 後者は巻頭に大きめの写真を使った特集などを組んでおり、多少情報は異なりますが、同じときに取材をしたものを流用することがありました。

 最近でも、使用写真がほぼ同じことから、こうした流用は行われている事例があると判断できます。その場合、ムックは冊子型よりも情報量が劣ることが多いので、冊子型を選択した方が無難なようです。

(3) ガイドブックの取材は誰がしているのか?

 ガイドブックの取材や編集はガイドブックを発行している出版社(版元)が行っている例はほとんどありません。通常は、編集プロダクションとよばれる小さな会社が、ほとんど丸抱えでガイドブックをつくっています。

 しかも海外へ実際に取材に行くのは編集プロダクションの編集者ではなく、そのプロダクションが雇うフリーランスのライターであることが多いのが実情です。

 私はまず、どの編集プロダクションが担当しているのか、本の奥付(本の末尾に著者名などが記されている部分)から確認することにしています。その国についてより詳しいことが知りたい場合、編集プロダクションやライターの名前を検索することも。

2016.06.13(月)
文=橋賀秀紀