『ニュー・シネマ・パラダイス』のロケ地
胃袋が満たされたところで、トラーパニに隣接してそびえたつ標高750メートルの山岳都市エリチェへ。
エリチェは古くはフェニキア人の拠点として都市となりましたが、現在残る遺構の多くは12世紀のもの。磨耗して光沢をみせる石畳は、かつて歩いてきた人の数を想起させます。
町から見下ろす海やシチリアの大地、そしてトラーパニ近郊の広がる塩田からの逆光もこの都市の魅力。
今回シチリア渡航の最大の目的は、前回の訪問で感動した「貴族の館」を再訪することでした。
シチリア最大の都市パレルモの郊外にあるバゲーリアはかつて、貴族たちがこぞって別荘(ヴィラ)を建てました。その多くは失われてしまいましたが、ヴィラ・ヴァルグァルネーラは町を睥睨する高台にいまも残っており、1泊15,000円ほどで泊まることができるのです。
前回訪問したときに案内してくれた当主のマルコは不在でしたが、ヴィトリア公爵夫人が前回と同じフレンドリーさで対応してくれました。自分が素晴らしいと思った宿やレストランがあり、そこで人間関係が構築できたら再訪する。それが旅を楽しくするルールの一つといえるでしょう。
シチリアは公共交通機関の便が悪いので、周遊するならレンタカーがおすすめ。
今回はプジョーを借りて、シチリア中を訪ねました。一定の世代以上なら、そのタイトルを聞いたことはあるだろうジュゼッペ・トルナトーレ監督の名作『ニュー・シネマ・パラダイス』のロケ地となった村、パラッツォ・アドリアーノ。パレルモから車で片道2時間ほどかかります。
標高700メートル、人口2000人あまりのパラッツォ・アドリアーノの村そのものは歩いてすぐにまわれてしまうほどの大きさ。ツーリストの数はまばら。カフェの椅子を並べて昼から時間をつぶしにかかるオヤジたちの天国です。
映画に登場するパラダイス座はセットだったので現存しませんが、その周囲の建物は映画が放映された1988年から30年近くたったいまもほとんど変わっていないように見受けられます。
シチリアを北から南に縦断し、再び海にやってきました。シチリア南西部のリゾート地、ポルト・パーロ。めざすは、ウニのパスタが有名だというトラットリア、ダ・ヴィットリオ。
目の前にはビーチが広がり、イタリア女子がこれみよがしな姿で寝そべるなか、こちらは色気よりも食い気で魚に食らいつきます。
この店にかぎらないのですが、シチリアは極力2人以上で旅をしたほうがよいです。レストランで出てくる量がとてつもなく多いので、どんなにおいしいものでも途中で苦痛になってきます。
ベストは4名でレンタカーでまわること。こう書いているうちにまた行きたくなってきました。続きはまた紹介したいと思います。
橋賀秀紀(はしが ひでき)
トラべルジャーナリスト。筑波学院大学非常勤講師。東京都生まれ。著書は『エアライン戦争』(宝島社)など。海外渡航歴は200回以上。執筆、講演の依頼、内容の問い合わせは、CREA WEB編集室まで。
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2016.10.31(月)
文・撮影=橋賀秀紀