【次に流行るもう一曲】
JY「好きな人がいること」

元KARAの知英のソロ歌手名義が“JY”

伊藤 2曲目はJYの2ndシングル「好きな人がいること」。JYでピンとこない人は、元KARAのメンバーといえば分かるのでは? 2014年に同グループを脱退後は“知英(ジヨン)”名義で活動拠点を日本に移し、女優として活躍。ソロ歌手としての名義は「JY(ジェイワイ)」で活動中。

山口 僕はK-POPは詳しくないのですが、たまたま観たテレビドラマに女優として出演していて、美人で存在感があるんだけど、ちょっとした違和感があって、調べたら元KARAのメンバーで驚きました。日本語上手いし。

伊藤 もともと日本のドラマや映画が好きだったらしいです。ってか、まだ22歳ってことに驚きますよね? (笑)

山口 年齢には驚きませんが、たしかに貫禄はありますね。日本人とか韓国人とかではなく、アジア人というアイデンティティを感じます。

伊藤 KARAが日本で一世を風靡した曲「ミスター」の時はまだメンバーだったJYだけど、その後、学業や演技に専念するとか事務所との契約がどうのとか色々あったみたい。だけど結局、KARAを離れ日本で女優として活動再開し、ソロアーティストとしてもデビュー。韓国のアーティストならではの、日本での活動を選ぶ時の葛藤・決意があったと思うんだけど、しっかりと女優“知英”、ソロアーティスト“JY”として日本でも認知されてきたように感じます。

山口 正直に言うと、アイコンやパフォーマーというポジションだと、日本人よりもアジアに逸材が多いです。歌唱力でも日本人は分が悪いのが正直なところ。僕はタイ人美少女をオーディションで選んで日本でメジャーデビューさせたり(Sweet Vacation)、インドネシア人のロックシンガーを日本で活動させたり(Aiu Ratna)した経験があるのですが、シンガーはアジア人、プロデューサーは日本人、市場はグローバルというのは理にかなった戦略だと常々思っています。

伊藤 日本にも才能のある逸材はいるんだろうけど、それを育てる環境がいまいち整っていないのか、個々のモチベーションの問題なのか。アイコンやパフォーマーとしても完成度が高すぎると可愛げがない、みたいなオーディエンスからの目線も関係しているように思います。今回の楽曲「好きな人がいること」を聴くとまさにJポップ。韓国の若いアーティストっていうとハイクオリティなダンスとUS寄りなダンスミュージックって印象があるけど、いい意味で隙のある楽曲で日本のオーディエンスを意識している。彼女は完全に日本の地に足をつけているし、これからアジアに、世界に、“日本から”発信していくんだという決意を感じますね。

JY「好きな人がいること」
ソニー・ミュージックレコーズ 2016年8月31日発売
完全生産限定盤[CD+DVD]2,300円、初回生産限定盤[CD+DVD]1,800円、通常盤[CD]1,200円(税抜)
■JYは、元KARAのメンバー、知英のアーティストとしての名義。2014年のKARA脱退後は、TVドラマ「地獄先生ぬ~べ~」「民王」、映画『暗殺教室』などに出演。本作の表題曲は、同名のフジテレビ系月9ドラマ「好きな人がいること」の主題歌。CDのジャケット撮影およびミュージックビデオの監督は蜷川実花が手がけている。
■「好きな人がいること」作詞/JY、山本加津彦 作曲/山本加津彦 編曲/山口隆志
■オフィシャルサイトURL http://www.jy-official.com/

【動画サイト】
「好きな人がいること」

URL https://www.youtube.com/watch?v=XHRlkVT4Dxg

山口哲一 (やまぐち のりかず)
(株)バグ・コーポレーション代表取締役、コンテンツビジネス・エバンジェリスト、音楽プロデューサー。「デジタルコンテンツ白書」(経済産業省監修)編集委員。経済産業省「コンテンツ産業長期ビジョン検討委員会」委員。国際基督教大(ICU)高校卒。早稲田大学在学中から音楽のプロデュースに関わり、中退。1989年、バグ・コーポレーションを設立。音楽プロデューサーとしてSION、村上“ポンタ”秀一のマネージメントや、東京エスムジカ、ピストルバルブ、Sweet Vacationなどの個性的なアーティストをプロデュースする一方、音楽ビジネスとITに関する実践的な研究を行っている。プロデュースのテーマは、新しいテクノロジーの活用、グローバル展開、異業種コラボレーション。2011年頃から著作活動を始め、国内外の音楽ビジネス状況の知見を活かし、音楽(コンテンツ)とITに関する提言を続けている。エンタメ系スタートアップを対象としたアワード「START ME UP AWARDS」をオーガナイズし、プロ作曲家育成「山口ゼミ」や「ニューミドルマン養成講座」を主宰するなど、次世代の育成にも精力的に取り組む、異業種横断型のプロデューサー。近著に『新時代ミュージックビジネス最終講義』(リットーミュージック)、『10人に小さな発見を与えれば、1000万人が動き出す。』(ローソンHMV)、『最先端の作曲法 コーライティングの教科書』(リットーミュージック・伊藤涼との共著)、『とびきり愛される女性になる。 恋愛ソングから学ぶ魔法のフレーズ』(ローソンHMV・伊藤涼との共著/「ラブソングラボ」名義)、『DAWで曲を作る時にプロが実際に行なっていること』(リットーミュージック)、『世界を変える80年代生まれの起業家 起業という選択』(スペースシャワーブックス)、『プロ直伝! 職業作曲家への道』(リットーミュージック)などがある。
Twitter https://twitter.com/yamabug
BLOG http://yamabug.blogspot.jp/
詳細プロフィール http://yamabug.blogspot.jp/2010/05/profile.html

伊藤涼 (いとう りょう)
音楽プロデューサー、ソングライター。「青春アミーゴ」などのミリオンセラーをプロデュース、後にフリーランスに。ソングライターとして、乃木坂46「走れ!Bicycle」、AKB48「ここにいたこと」などの作品がある。作詞アナリスト、フードミュージックプロデューサーとしても活躍。論理的で明晰な分析力に注目。著書に『作詞力 ウケル・イケテル・カシカケル』(リットーミュージック)、山口哲一との共著に『最先端の作曲法 コーライティングの教科書』(リットーミュージック)がある。
マゴノダイマデ・プロダクション http://www.mago-dai.com/
ブログ「伊藤涼の音楽」 http://ameblo.jp/magodai/
伊藤涼が主宰する作詞研究室リリック・ラボ 
https://www.facebook.com/lyric.laboratory/?ref=ts&fref=ts

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2016.08.15(月)
文=山口哲一、伊藤涼