「ちょっとつらいお年頃なもんで」

 あと、お化粧をするたびに汗が溢れ出てくるので、可能な限りスッピンで外を歩くことにしました。

 テレビの仕事のときはメイクさんがきれいに作り上げてくれるから、スッピンでテレビ局へ行く。ラジオの仕事のときは、一緒に放送するお相手には失礼ながら、リスナーの皆様には見えないからスッピンで。近所の買い物はもちろん、しだいに近所ではない買い物や用事や、気の置けない友との会食のときでも、スッピンで済ませるようになっていきました。

 ときどき、出くわした相手に「あれ?」という顔をされてもなんのその。

「ごめんなさいね、スッピンで。今、ちょっとつらいお年頃なもんで」

 断りを入れれば許されるだろうという身勝手な方針で突き進みました。

知られているほうが、圧倒的に楽

 昔の女性は更年期障害なんぞという言葉を口にするのも憚られたと思います。でも今では男性も更年期障害を自認する時代。そうであることを周囲に知られているほうが、圧倒的に楽です。恥ずかしいからと内に秘めて一人で我慢するよりも、汗をタラタラ流しながら、

「すいませんね。こういうお年頃なの」

 あちこちでそう断りを入れておけば、詳細はわからずとも、なんとなく理解してくれる。男性とて優しく対応してくれる。いい時代になったと思います。

 更年期に女性ホルモンが激減し、最後にはすっかりなくなってしまう。つまり更年期になって閉経すると、もう女性ではなくなる。そんな言い方がまかり通っていた時代と今は違います。

 もちろん若い頃のような女性ホルモンいっぱいの身体ではなくなりますが、女性でなくなるわけではない……はず。

年とる力

2026年5月20日
定価 1,045円(税込)
文藝春秋
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