「喉もと過ぎれば更年期。一つ失うたびに笑ってみる。そんなに楽しいことばかりじゃないけどね(笑)」と語るのは、エッセイストの阿川佐和子さん(72)。52歳頃に本格的に始まったホットフラッシュと約10年間向き合ったといいます。阿川さんが語った、老いてゆく身体への「ささやかな対処法」とは?
ここでは、著書『年とる力』(文春新書)を一部抜粋して紹介します。(前後篇の後篇
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ではその間、どうやって対処したか。今は治療法も進んでいるようで、副作用の少ない漢方療法とかホルモン補充療法などが行われているようですが、私は自然に任せたいと思ったので、医学的な療法には頼りませんでした。
そのかわり、自分なりのささやかな対処を一つずつ重ねていきました。
たとえば、前髪が額に当たるだけでイライラする。当時は少し長めの前髪を斜めに流していたのです。これがイライラの元になる。ならば短く切ろう。
そう思い、ハサミを握り、眉毛よりだいぶ上までばっさり切り落としました。ワカメちゃんのようになりました。私自身は、木村カエラ気分だったんですけどね。どちらにしても、おかげですっきり。
とにかく私は暑いんじゃい
やたらに暑い。夏は特に暑い。ノースリーブを着たいけれど、腕が太いので二の足を踏む。そうなんです。告白するのも憚(はばか)られますが、顔がさほど大きくないわりに、手足は太くて短い。若い頃、夏にノースリーブのワンピースを着て出かけると、仕事仲間の男性が私の腕のあたりに視線を落として、
「あれ? アガワさん、少し太った?」
必ず言われました、必ず! 今ならセクハラになりそうですが、当時はそんな発想はなかったからねえ。言われたくはないけれど、事実だったのでしかたがない。
どちらかというと着やせするタイプらしく、冬場、長袖を着ているとわからないのですが、ノースリーブの服を着た途端、予想をはるかに超えた太い腕があらわになって、驚かれるという始末です。
何度も言われるうちに情けなくなり、以後、
「人前でノースリーブは着ない」
ことを自らに課しました。でも更年期になり、そんな意地を張っている場合ではなくなった。ええい、何でも好きに言うがいい。とにかく私は暑いんじゃい。開き直りました。
