流行りの「●●時間断食」の効果やいかに?

 日本の研究グループが、日本を含む世界12カ国の人の腸内細菌を比較した研究があります。すると、腸内細菌の種類は国ごとに大きく異なっていて、外国人とくらべて日本人の腸にはビフィズス菌をはじめとする善玉菌が多く、炭水化物とアミノ酸の代謝に適した環境でした。そして、大腸の遺伝子に傷がつきにくい、わかりやすく言うと、大腸の健康度が高いことも示されました。

 この結果は、日本人が長年にわたり穀物を食べ、食物繊維をしっかり摂取してきたことを反映するものと考えられています。食物繊維は善玉菌の餌であり、もとからすんでいる菌を元気にしてくれるからです。

 さて近年、腸内環境への影響が注目されているのが断食です。修行僧がおこなうような本格的な断食は無理としても、1日のうち16時間食事をとらないとか、週末に1日食事をしない、3食のうち1食を抜くというくらいなら、何とかなりそうだと感じる人が多いのでしょう。

 イスラム教にはラマダンと呼ばれる宗教行事があり、約1カ月にわたって日の出から日の入りまで一切の飲食を断ちます。ラマダン後に信者の腸内細菌を調べると、ラマダン前とくらべて善玉菌が増え、腸内細菌が多様化するという報告は以前からありました。

 これを確かめるべく、科学的に厳密な形で「プチ断食」を3カ月間おこなってもらい、腸内環境の変化を調べる研究が実施されました。2023年に公表された論文によれば、参加者は1週間のうち連続しない3日に限って1日の総カロリー摂取量を4分の1に減らしました。すると、腸内細菌の多様性が明らかに高まったのです。

 多様な腸内細菌がいる腸は強い腸です。たとえ善玉菌であっても、限られた種類の菌しかいなければ、ちょっとした環境の変化にも適応できません。悪玉菌や、善にも悪にも染まる日和見菌にも役割があり、種々さまざまな菌がバランスよく存在することで腸は健康になります。

 「やっぱり、断食は有効なんだ」と考えたくなるかもしれませんが、この実験には続きがあります。プチ断食グループの他に、1週間の総カロリー摂取量を3分の2に減らしたグループも、プチ断食グループと同じくらい腸内細菌の多様性が上がりました。つまり、大切なのはカロリー摂取量を減らすことであって、断食は一つの手段にすぎないということです。

» 【前篇を読む】「グルテンフリーで糖尿病に…」「発祥の地・米国でも疑問視」最新データが示す、体質の人種差《日本人、こんな健康法は意味がない》

奥田昌子(おくだ・まさこ)

京都大学大学院医学研究科修了。内科医。京都大学博士(医学)。医学部卒業後、博士課程に進み基礎研究に従事。健診ならびに人間ドック実施機関で30万人近くの診察にあたる。海外医学文献と医学書の翻訳も行う。現在は産業医を兼務し、ストレス対応を含む総合診療を続ける。著書に『内臓脂肪を最速で落とす』(幻冬舎新書)など多数。

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