新しい福浦灯台へ

 海沿いの道をとぼとぼ歩いていると、やがて、新しい灯台の頭部が見えてきた。

 近代的な形で、愛らしい旧福浦灯台に比べると無骨な感は否めない。

 古いものが朽ち、新しいものに取って代わられる。避けて通れないのはわかっているが、寂しい。

 かつて通っていた小学校の、隙間風びゅーびゅーの古い木造校舎が、鉄筋の新校舎に建て替わったときは嬉しくてたまらなかったものだが、記憶に鮮明に残っているのは木造校舎の方なのだ。

 新福浦灯台の近くには腰巻地蔵があった。

 海上保安庁の方が、新灯台について説明してくれた。

 昭和二七年、旧灯台に代わって稼働。現在の灯台は一九八四年(昭和五九年)に建て替えられたもの。光源はメタルハライドランプが使われているそうだ。

「それでは中を見ますか」

 促されて灯台の内部に足を踏み入れる。中はやはり狭い。階段ではなく、壁に設置された梯子を恐怖心と戦いながら昇っていく。

 先導してくれる海上保安庁の方は軽々と梯子を昇っていく。慣れていることもあるのだろうが、日頃の鍛錬が違うのだ。

 投光器が設置された部屋に到着すると、ほっと一息。しかし、フレネルレンズはないし、LEDも使われていない。

 写真撮影のためにデッキに出ろと言われた。渋々応じる。

 新灯台の脚元は切り立った崖になっている。岩崎ノ鼻灯台の百倍、恐ろしい。

 極力、下を見ないように努めながら撮影をこなすと、這々の体で下に降りた。

 地面に足がつくと、恐怖はあっという間に消え失せる。

 コロナ禍以降、足が遠のいているが、以前は登山をやっていた。北アルプス、南アルプス、中央アルプスに八ヶ岳。こんなにも高所が怖いのに、よく登っていたものだ。恐怖を乗り越えた先に待っている達成感と絶景を求めていたからだ。灯台からの眺めも悪くはないが、しかし、三千メートル級の山の頂から見る景色には遥かに及ばない。恐怖を克服しろというのは無理な話だ。

 新灯台を後にすると、次は金沢。夜はカニしゃぶが待っている。

 能登を車で移動中、あちこちで見かける看板が気になっていた。

 〈8番らーめん〉

 それこそ、コンビニかと思うぐらいあちこちに店舗がある。

 ネットで調べてみると、一九六七年(昭和四二年)、国道8号線沿いの田圃のど真ん中で営業開始。だから8番なのだ。今では県外にも進出して数百店舗のチェーンになっている。定番は野菜らーめん。どうやら、石川県民のソウルフード的ラーメンのようではないか。

 よし。昼飯は8番の野菜らーめんにしよう。

 途中で高速に乗り、高速を降りた先の〈8番らーめん〉に立ち寄った。

 頼んだのはとんこつ醤油の野菜らーめん。炒めた野菜がたっぷり載った、体に優しい味のラーメンだった。

 この店舗も地震でダメージを受けたらしく、営業を再開したのは一年ほど前のことだったようだ。カウンターの内側に地震直後の店の写真が飾られていた。

 地元の人たちは、店の再開を喜んだことだろう。

 ラーメンを食べ終えると、次はいよいよ金沢市街。

 昨年訪れた、腰が抜けるほど海鮮が美味だった居酒屋を予約してある。その時、隣の席の客が食べていたカニしゃぶをどうしても食べたいと思っていた。

 待ってろよ、カニしゃぶ。

 しかし、その前に大野灯台に挨拶しなければならないのであった。(以下次号)

岩崎ノ鼻灯台(富山県高岡市)

所在地 富山県高岡市岩崎ノ鼻
アクセス あいの風とやま鉄道「高岡駅」から車で25分、JR氷見線「越中国分駅」から上り徒歩15分、国道415号線「もみじ姫公園」から上り徒歩10分
灯台の高さ 14m
灯りの高さ※ 58m
初点灯 昭和26年
※灯りの高さとは、平均海面から灯りまでの高さ。

旧福浦灯台(石川県羽咋郡志賀町)

所在地 石川県羽咋郡志賀町福浦港
アクセス のと里山街道「西山IC」から車で約25分、福浦バス停から徒歩5分
灯台の高さ 5m
初点灯 明治9年

福浦灯台(石川県羽咋郡志賀町)

所在地 石川県羽咋郡志賀町福浦港
アクセス のと里山街道「西山IC」から車で約25分、福浦バス停から徒歩5分(「腰巻地蔵」方面に徒歩2分)
灯台の高さ 28m
灯りの高さ※ 15.2m
初点灯 昭和27年
※灯りの高さとは、平均海面から灯りまでの高さ。

海と灯台プロジェクト

「灯台」を中心に地域の海の記憶を掘り起こし、地域と地域、日本と世界をつないでいきます。そして、これまでにはない異分野・異業種との連携も含めて、新しい海洋体験を創造していく事業です。
https://toudai.uminohi.jp/

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