「本当に何もしないんですね(笑)」と言われたことも

――育児を専門家に任せることに対して、「かわいそう」という声もあります。

 その意見も、わかります。特に若いお母さんほど、周囲の目が気になると思いますし、「ちゃんと自分でやらなきゃ」と思ってしまう気持ちも自然だと思います。

 ただ、私自身は、ずっと一緒にいることだけが、愛情の証明ではないと思っています。母親が余裕を持って生きている姿を見せることも、子どもにとっては大事な教育だと思うんです。

 ある日、お客さまと子ども、そしてシッターさんと一緒に焼肉に行ったことがありました。そのとき、お客さまから「先生、本当に何もしないんですね」と言われて(笑)。確かに食事の段取りも子どもの世話も一切シッターさんまかせで、ただ会話を楽しんでいたのですが、そのとき、ふと前篇で話したドバイでの出来事を思い出したのです。そこでお客さまに「ドバイの王族ではシッターやナニーが子どもの世話をするのが普通だ」という話をしたら、「そんな教育があるんですね」と、とても驚かれていました。

――ドバイで顧客の母に投げた言葉が自分に返ってきたんですね。

 そうなんです(笑)。私もハッとしました。そして、「私もそういうふうに子育てをしたかった」とおっしゃったのです。

 日本では、母親が子どもを育てるもの、母親が裏方ですべてを回すもの、という価値観がまだ根強いと思います。ですから、そうやって育児を人任せにすることに罪悪感を覚えてしまう。でも、そのお客さまは、「もし最初からそういう考え方ができていたら、もっと楽に子育てができたかもしれない」とも話されていました。

 他人に任せることは、愛情が足りないからではありません。子どもは、母親ひとりで育てるのではなく、いろいろな大人と関わりながら育っていけばよいのではないでしょうか。

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