英語は通じず、食事も出ないという羽目に
やがて夜がやってきて、問題が2つ判明しました。
おじさんは英語がNG、クロアチア語しか話せません。基本的にここは自炊で、ロヴィニで食料を仕入れることなくやってきたため、私の食べ物がありません。
おじさんとの会話は、絵。絵心のあるなしに関係なく、必要となれば、なんとかなるもの。おじさんはこの職について7年、月の半分はここ、残りはイストラ半島の中心都市プーラの家で過ごすとのこと。そして家には妻がいるが、ここにいる時は独身だとも……。
もうひとつの問題である、食事はガマン。でも、おじさんが手作りのお酒とチーズを分けてくれました。Wi-Fiはないけれど、テレビはあり、二人で音楽番組を観ながらちびりちびりと酌を交わす不思議な時間帯。
酔っぱらったおじさんが「ワルツを踊りたい」的なことを言っていたけれど、軽く無視。ここでは独身だから、ええじゃないか的アクションには知らんぷり。思えば不思議な一夜でした。
翌朝はウミネコの鳴き声で起床。朝の光を通す木綿のカーテンがかかった、観音開きの木枠の窓辺に佇むと、周囲は輝く海。リゾートとは異なる、生活感のある海の眺めというか。おじさんは月の半分、一人でこんな朝を迎えているのかと、ちょっと羨ましい反面、複雑な気持ちにも。
2016.03.05(土)
文・撮影=古関千恵子