世界三大珍味のひとつ、トリュフの歴史

白トリュフや黒トリュフ入りのオリーブオイル、パスタ、塩、ペーストなど、様々な商品が並ぶタルトゥーフィ・モッラの店内

 グルメたちが秋の季節に待ち望んで止まないのが、たまご茸やポルチーニ茸などのキノコ類だ。なかでも最高級の食材として多くの人々を虜にするのは、世界三大珍味のひとつと言われるトリュフだろう。オークションで競り落とされるほど貴重とされる白トリュフは、2007年(1個1.5kg)、2010年(計2個、内1個は約1kg)に33万ドル (約3300万円) という莫大な値で落札され、世界中の人々を驚かせた。

ポルチーニ茸と白トリュフのペーストは焼いたパンに塗りブルスケッタにすると絶品だ

 黒トリュフ、白トリュフ、夏トリュフなどの種類に分類することのできるトリュフだが、その存在は非常に古く、記述によれば紀元前にまで遡る。トリュフはその独特な香り、姿形から、古代ローマ、中世、ルネッサンスと、それぞれの時代において、時には毒性のある危険な食物として、あるいは魔力を持つ食材として、または効能のある薬として、扱われてきたようだ。

採れたばかりの白トリュフ。大きいほど価値が高い。最も大きなサイズ(244g)だと952ユーロ(約133000円)

 高級食材としての白トリュフ探しが貴族の遊びとして流行りはじめたのは1700年代になってから。当時、イタリア北部ピエモンテ州を統治し、後にイタリアが統一され、初代国王となるサヴォイア家の人々が、各国の大使や要人を招き、接待を兼ねた白トリュフ探しをはじめたのがきっかけだと言われている。ちなみに、ロッシーニは、白トリュフを「キノコのモーツァルト」と讃え、バイロンは、その香りが創造力を掻立てると、白トリュフを書斎の机に常備させたというエピソードが残されている。

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text&photographs:Yukie Muramoto