古代遺跡での野外公演は、イタリアの夏の風物詩

開演30分前。イタリア人だけでなく、世界各国の旅行客が続々と会場に到着

 世界中に多くのファンを持つアレーナ・ディ・ヴェローナ(Arena di Verona)の音楽祭。今年はとくに100周年を迎えたこともあり、アンドレア・ボチェッリ、ホセ・カレーラス、プラシド・ドミンゴの共演が実現し、その様子がイタリア国営放送RAI UNOでライブ放映されるなど、例年以上に注目を集めている。だが、知名度ではヴェローナには及ばずも、古代遺跡ならではのスケールの大きさを肌身に感じながら野外公演が楽しめるローマのカラカラ浴場(Terme di Caracalla)も特筆すべきイタリアの夏の風物詩だ。

左:まずはチケット拝見。ここから劇場スペースまでの散歩も優雅なひととき
右:レッドカーペットを奥まで進むと劇場エリアのエントランスが

 カラカラ浴場が建設されたのはローマ帝政時代の212年から217年にかけて。浴場の名前に由来する当時のローマ皇帝だったカラカラ帝が社交目的のレジャー施設として建てた大規模な浴場である。残存する古代建築物のなかでも状態は悪くなく、メジャーなコロッセオやフォロ・ローマノに比べて見学者が圧倒的に少ないので、私はよく穴場の観光スポットとして友人に勧めている。

左:古代建築を観賞しつつ野外劇場へ。カラカラ浴場だからこその贅沢だ
右:よりいっそう美しさが引き立つライトアップされたカラカラ浴場跡

 カラカラ浴場がローマ・オペラ座の夏の野外劇場として使われるようになったのは1937年のこと。その他、1960年のローマオリンピックでは器械体操の競技場として、また、1990年にイタリアで開催されたサッカーW杯には、今はなきパヴァロッティをはじめとするドミンゴ、カレーラスの三大テノールが決勝戦の前夜祭コンサートを行うなど、重要なイベントの会場としてその役割を担ってきた。

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text&photographs:Yukie Muramoto