◆ 辻常陸窯
耐火レンガ(トンバイ)の廃材などを塗り固めた有田伝統のトンバイ塀に、歴史を感じさせる門構え。有田ならではの風情たっぷりの景色に、心が和んでくる。江戸初期に禁裏(宮中)御用窯元、明治期以降は御用達窯となり今も宮内庁とのかかわりが深い辻常陸窯。
現在の辻常陸さんは15代目。「御用達窯としては、手のかかるもの、最高のものを作らなくてはなりません。今も一筆一筆きちんと止めて、緻密に描きます」という言葉どおり、染付のブルーはどこまでも優美で上品だ。
伝統に忠実であることを求められながらも、日本初の磁器洋食器を作ったり、“極真焼”という辻家ならではの秘法を生み出したりと、時代ごとに進化しながら、品格を保ってきた歴史がある。
「古典をするために新しいものを作っていく、その繰り返しです」とやさしく語る辻さんのかたわらには、長男の浩喜さん。ジャンルを超えたアーティストやデザイナーたちと仕事をしながら、今の空気を反映させた製品を生み出している。「時代が変わっていく中で、自分に何ができるのか。そう考えながら少しずつ動いているところです」。
有田の伝統を支えてきたのは、いつでもよりよいものを生み出そうとする人々の熱意。昔ながらのよさを湛えた風景には、新しい風が吹き、美しいものを作り出すパワーがあふれていた。
辻精磁社 辻常陸窯(つじひたちがま)
電話番号 0955-42-2411
●ショールーム
営業時間 9:00~17:00
定休日 不定休
「ARITA SELECTION きんしゃい有田豆皿紀行」
有田の地で日本ではじめて磁器が焼かれた1616年から今年で400年。それを記念した「きんしゃい有田豆皿紀行」プロジェクトでは、26の窯元の豆皿を紹介している。
» 特集「400年の歴史を手のひらにおさめた“豆皿”から始まる有田焼をめぐる旅」トップへ
佐賀・有田焼の窯元を訪ねる
2016.03.18(金)
取材・文=嵯峨崎文香
撮影=山元茂樹
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