◆ 柿右衛門窯

古くから大切に使われてきた土型を用いて、昔と変わらない優美な絵と形が生まれる。

 あまりにも有名な柿右衛門窯も、ただ頑なに伝統を守り続けているだけではなかった。そこには時代の動きを見つめ、革新を求めるまなざしがある。

 かつて、日本で初めて上絵付けに成功した初代酒井田柿右衛門。今も伝わる柿右衛門様式は、濁手(にごしで)と呼ばれる、あたたかみのある乳白色の柔らかな地肌、たっぷりの余白、左右非対称の絵が特徴。当時はどれもかなり斬新な表現だったようで、その思い切りのよさが人々を魅了したのではないか、と想像してみるのは楽しい。

工房は「細工場」「絵書座」「仕上場」など、工程ごとに部屋が分かれている。ここ「細工場」では、職人さんたちがひたむきに器の形を作る。

 「昔のやきものならではのよさに学びながら、今の時代に合ったものを丁寧に作っていく。そうして生まれた器で、食事を楽しんでいただきたい」という15代柿右衛門さんは、2年前に襲名したばかりの若き当主。「人々に受け入れられているものには、それなりの理由がある」と、流行りのリーズナブルな量産品や今風の食器にもリサーチを怠らない柔軟さ、懐の深さに感服する。

窯元には、初代が赤色を生み出すきっかけになったとされる柿の木が健在。展示場・古陶磁参考館では、華やかな作品の数々を見ることができる。

 花鳥風月、日本の美しさを描いた絵をじっと見つめていると、ひとつひとつの線の筆づかいや色合いがいきいきと感じられてくる。伝統を受け継ぐというのは、長い歴史のよさを自分たちのものにして、今の空気をブレンドしていくことかもしれない。有田ではものすごいことが日々あたりまえに起こっているのだ、と感心する。

あたたかみのある色合いで、可憐な花鳥風月を描くのが柿右衛門様式の特徴。

柿右衛門窯(かきえもんがま)
電話番号 0955-43-2267
URL http://www.kakiemon.co.jp/

●展示場・古陶磁参考館
営業時間 9:00~17:00
定休日 年末年始


「ARITA SELECTION きんしゃい有田豆皿紀行」

 有田の地で日本ではじめて磁器が焼かれた1616年から今年で400年。それを記念した「きんしゃい有田豆皿紀行」プロジェクトでは、26の窯元の豆皿を紹介している。

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