マレー半島とボルネオ島北部にまたがる常夏の国、マレーシア。実はこの国、知る人ぞ知る美食の国なのです。そこでこの連載では、マレーシアの“おいしいごはん”のとりこになった人たちが集う「マレーシアごはんの会」より、おいしいマレーシア情報をお届け。多様な文化が融け合い、食べた人みんなを笑顔にする、とっておきのマレーシアごはんに出会えますよ。
年中あたたかく、オープンエアの屋台が一日中(そして一年中!)大賑わいのマレーシア。外食文化が発展していて、「1日3食、外食」という人も珍しくありません。日本では「朝食を食べない」「朝ごはんはコーヒーだけ」という人もいますが、マレーシアではそんなこと、あり得ない! 屋台はもちろん、レストランにも早朝からたくさんの人が集まります。
さらに朝ごはんから、マレーシアの名物料理を提供するところが多いのも、旅人には嬉しいポイント。グルメなマレーシア旅のコツは、朝からしっかりごはんを楽しむことにあるのです。
また、よく日本人がびっくりするのは、朝ごはんミーティング。朝ごはんを食べながらの打ち合わせ、朝ごはんデートなんてものもよくあります。それも平日、休日問わず。マレーシアでは「朝活」が日常生活の一部なのです。そこで今回は、そんなマレーシア人のパワーの源、朝食メニューを紹介します。短い日程の旅行なら、この朝ごはんメニューをスケジュールに組み入れれば、マレーシアグルメをもれなく堪能できるはずです!
マレーシアの朝ごはんといえば「ナシレマッ」
ココナッツミルクの香りで南国の朝を満喫
マレーシアの国民食といわれる「ナシレマッ」は、朝ごはんの定番。ホテルの朝食ビュッフェには必ず用意されていますし、朝だけ出現する専門店も。バナナの葉で包まれた“ナシレマッおにぎり”を屋台で購入し、職場で食べるマレーシア人も多いです。
» ナシレマッとは?
一日の活力源は朝ごはんにあり!
「バクテー」は早朝から昼過ぎまでが勝負
ガッツリ肉料理の「バクテー」ですが、伝統的な食事のスタイルは朝ごはん。その昔、肉体労働者の活力源として、豚の骨からとったダシ汁を朝食に飲んだ、というのがその由来です。専門店は早朝から家族連れでにぎわい、昼過ぎで閉店の店もあります。
» バクテーとは?
マレー半島東海岸の定番朝ごはん
クールなルックスで涼しさも運ぶ!?
青いごはんこと「ナシ・ケラブ」。パラパラ食感のご飯に、ハーブたっぷりの爽やかな味で、朝ごはんにぴったりです。ハーブの繊維質の関係なのか、腹持ちがいいのも朝ごはん向きだとか。マレー半島東側の町の朝ごはんには欠かせないメニューです。
ピリッと辛い料理で朝から覚醒!
奥深きマレーシアの焼きそば「ミーゴレン」
インド系マレーシア人が経営する食堂「ママッ」で提供している「ミーゴレン」。辛みの強い麺に溶き卵が絡みついた濃厚な味。このパンチのある味を朝からペロッとたいらげるのが、マレーシアの食文化。常夏のマレーシアの気候によく合う味です。
» ミーゴレンとは?
日本人の舌にも合うスープ麺
やさしいダシのうま味でホッと一息
辛くなくて、日本人にも食べやすい朝ごはんといえば、「ミー・スープ」。ダシは鶏や煮干しを使ったものが多く、体の疲れがふわっと抜けていくような滋味深さがあります。牛肉たっぷりの「ビーフヌードル」、幅広の麺の「フォーファン」も人気です。
ココナッツミルクと卵のハーモニー!
マレーシア式朝食の定番「カヤトースト」
マレーシア的モーニングの鉄板メニュー、「カヤトースト」。サクッと焼き上げた食パンに、ココナッツミルクで作った甘いカヤジャムとバターをダブルで挟んだもの。これに、コピ(甘いコーヒー)またはテタレ(甘いミルクティー)をつけるのがマレーシア流。
マレーシアの朝はパンケーキで始まる!
サクサクで軽い食感の「ロティ・チャナイ」
パイのようなサクサク食感の生地を、カレーソースにつけて食べる「ロティ・チャナイ」。インド系の屋台で提供している軽食で、人気の朝ごはんです。卵入り、チーズ入りなど種類も豊富。これを食べずして、マレーシアの朝は語れません。
スイーツ天国マレーシアは
朝から“クエ”が欠かせない!
マレーシアでは、お菓子全般のことを「クエ」といいますが、なかでも人気なのが、甘さひかえめ、モチモチ食感の蒸し菓子クエ。マレーシア人の朝ごはんによく登場します。朝食は小食という人は、前日に購入してホテルで食べるというのもあり(日持ちしないので、その点はご注意を!)。
» クエとは?
サクサクの生地にカレー味のジャガイモ
スナック菓子「カレーパフ」&テタレ
日本でいうとカレーパンによく似た「カレーパフ」。パリッと揚げた生地の中に、カレー味のマッシュポテトが入っています。手軽に食べられるスナックで、テタレ(甘いミルクティー)と一緒に朝ごはんで食べます。スパイシーな香辛料が食欲を刺激してくれます。
朝から体験すべき美食はこれ!
地元の人気店で味わう「点心・飲茶」
中国系民族が多く暮らすマレーシアは、「点心・飲茶」が絶品です! とくにねらい目の店は、中国系が住むエリアにあるローカルな屋台。朝6時頃から営業を開始し、10時頃には売り切れ御免の店もあり、蒸したて点心が驚くほどの安さでいただけます。
いかがでしたか。思い返せばマレーシアに住んでいたころ。朝、会社に出勤すると、同僚のマレーシア人がニンニク臭ぷんぷんの激辛チリソース入り「ナシレマッ」をワシワシ食べていて、その強靭な胃袋に尊敬の念を抱いたものでした。また、早朝から大行列の屋台も多く、人ごみにもまれながら「今、朝よね? 朝よね?」と時計を何度も見直したこともあります。
とにかく、マレーシア人にとって、朝ごはんは大事。一日を気分よくスタートさせるには、おいしいごはんが必須なのです。この国に訪れたらぜひ、朝から町にくり出し、地元の人に交じって朝ごはんを食べてください。
マレーシアごはんの会 古川 音(ふるかわ おと)
「マレーシアごはんの会」にて、マレーシア料理店とコラボしたイベント、マレーシア人シェフに習う料理教室を企画・開催。クアラルンプールに4年滞在した経験をもち、『ニッポンの評判』(新潮新書)のマレーシア編を執筆。マレーシアごはんの会の活動のほか、情報サイト「All About」でのマレーシアライター、食文化講演も担当している。
オフィシャルサイト http://www.malaysiafoodnet.com/
Column
マレーシアごはん偏愛主義!
現地で食べたごはんのおいしさに胸をうたれ、風土と歴史が育んだ食文化のとりことなった女性ふたりによる熱烈レポート。食べた人みんなを笑顔にする、マレーシアごはんのめくるめく世界をたっぷりご堪能ください。
2016.01.23(土)
文=古川 音
撮影=古川 音、三浦菜穂子