【次に流行るもう一曲】
ヒトリエ「ワンミーツハー」

一時代を画したボカロPが組んだロックバンド

伊藤 2曲目はヒトリエの「ワンミーツハー」。このバンドはニコニコ動画で一時代を築き上げた“現実逃避P”ことwowakaを中心に結成されたロックバンドですね。

山口 伊藤さんも芸域を広げてますね(笑)。現実逃避Pときましたか!

伊藤 2014年にメジャーデビューしたばかりのバンドだけど、さすが二コ動出身者だけあるな、っていう世界観の面白さと、聴くものを“虜”にする何かを持っていますね。

山口 ボカロPは、絵師や歌い手、踊り手などとコラボレーションすること、されることを前提にする楽曲発表をしますから、世界観を明確にする作り方を知ってますよね。ニコニコ動画って、動画で見せるわけですからね。そういう入り口からメジャーシーンに出てきたバンドが、どういう活動をしていくのかは興味あります。

伊藤 ニコ動も沢山のボカロPを輩出して、絵師や歌い手とのコラボで面白い作品を生み出してきたけれど、なんだか本当の意味では振り切らずに鎮火していく傾向にないですか? それも日本の音楽業界の慣習なのか、それともその音楽業界に慣れ親しんだユーザーの体質なのか。どっちにしてもクリエイターが、それに負けない、あきらめない体力をもっていないのでは。本当のスターが生まれるのは、まだまだこれからという気がします。

山口 僕は10年以上前に、デジタルが進んで、安価かつ手軽に映像制作ができるようになってきたので、これからはミュージックビデオの半分くらいはアーティスト自身がディレクションするようになるだろうと思ったのですが、いまだに珍しいですよね。日本の音楽家は保守的というか、クリエイターとして怠惰なんじゃないかな? という不満があります。ボカロP出身のバンドが、「全部自分たちでクリエイティブやるのが普通でしょ?」って活動してほしいですね。もちろんクオリティが高いのが大前提ですけれど。

伊藤 これから日本でも、インディペンデントで全体のクリエイティブに対して意識の高いアーティストがどんどん増えて、世界を獲る! って誰が言って、誰が実現するか。ここ5年くらいの勝負だと思うんで、その時が楽しみです!

ヒトリエ「ワンミーツハー」
非日常レコーズ/ソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズ 2016年1月27日発売
期間生産限定盤A[CD+DVD]1,500円、期間生産限定盤B[CD]1,200円
■ヒトリエは、2012年に本格的な活動を開始した4人組バンド。2014年にメジャーデビューを果たした後は、各地のロックフェスにも多数出演し、幅広い支持を受ける。このサードシングルの表題曲は、同名スマホアプリゲームを原作とし、TOKYO MXなどで放送中のTVアニメ「ディバインゲート」のオープニングテーマ。
■「ワンミーツハー」作詞・作曲/wowaka 編曲/HITORIE
■オフィシャルサイトURL http://www.hitorie.jp/

【動画サイト】
「ワンミーツハー」

URL https://www.youtube.com/watch?v=HpTbmkpzc0k

山口哲一 (やまぐち のりかず)
(株)バグ・コーポレーション代表取締役、音楽プロデューサー・コンテンツビジネスエバンジェリスト。
「デジタルコンテンツ白書」(経産省監修)編集委員。アーティストマネージメントからITビジネスに専門領域を広げ、2011年から著作活動も始める。エンタメ系スタートアップを対象としたアワード「START ME UP AWARDS」をオーガナイズ。プロ作曲家育成「山口ゼミ」や「ニューミドルマン養成講座」を主宰するなど次世代の育成にも精力的に取り組んでいる。異業種横断型のプロデューサー。著書に『10人に小さな発見を与えれば、1000万人が動き出す』(ローソンHMV)、『最先端の作曲法 コーライティングの教科書』(リットーミュージック・共著)、『とびきり愛される女性になる~恋愛ソングから学ぶ魔法のフレーズ』(ローソンHMV・共著/「ラブソングラボ」名義)、『DAWで曲を作る時にプロが実際に行っていること』(リットーミュージック)、『世界を変える80年代生まれの起業家 ~起業という選択~』(スペースシャワーブックス)、『プロ直伝!職業作曲家への道』(リットーミュージック)、『ソーシャル時代に音楽を“売る”7つの戦略~“音楽人”が切り拓く新世紀音楽ビジネス~』(リットーミュージック・共著)、『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本 』(ダイヤモンド社・共著)がある。
Twitter@yamabug https://twitter.com/yamabug
ブログ「いまだタイトル決めれず」 http://yamabug.blogspot.jp/
作曲家育成セミナー「山口ゼミ」 http://www.tcpl.jp/openschool/yamaguchi.html

伊藤涼 (いとう りょう)
音楽プロデューサー、ソングライター。「青春アミーゴ」などのミリオンセラーをプロデュース、後にフリーランスに。ソングライターとして、乃木坂46「走れ!Bicycle」、AKB48「ここにいたこと」などの作品がある。作詞アナリスト、フードミュージックプロデューサーとしても活躍。論理的で明晰な分析力に注目。著書に『作詞力 ウケル・イケテル・カシカケル』(リットーミュージック)、山口哲一との共著に『最先端の作曲法 コーライティングの教科書』(リットーミュージック)がある。
マゴノダイマデ・プロダクション http://www.mago-dai.com/
ブログ「伊藤涼の音楽」 http://ameblo.jp/magodai/
伊藤涼が主宰する作詞研究室リリック・ラボ 
http://www.mago-dai.com/?p=778

Column

来月、流行るJポップ チャート不毛時代のヒット曲羅針盤

音楽ビジネスとITに精通したプロデューサー・山口哲一。作詞アナリストとしても活躍する切れ者ソングライター・伊藤涼。ますます混迷深まるJポップの世界において、この2人の賢人が、デジタル技術と職人的な勘を組み合わせて近未来のヒット曲をずばり予見する!

2016.01.14(木)
文=山口哲一、伊藤涼