◆年賀状の切手をていねいに貼りつける
このコラムが公開される頃には、ポストに投函した年賀状が元日までに届く期限をとうに過ぎているかと思うが、忙しい仕事にも一段落ついた年末のひと時、水を含ませた海綿やスポンジに52円切手の裏面を撫でつけ、上下左右が傾かぬようきっちりと貼りつけるのは、何だか特別なセレモニーのようで趣深いものだ。
そんな折、気持ちを引き締めるためにぜひ観たいのがこの映画だ。
●冬休みに観たい映画〈101〉
『鬼龍院花子の生涯』
監督:五社英雄/出演:仲代達矢、夏目雅子、岩下志麻/1982年 日本/Blu-ray/4,700円/発売元:東映ビデオ
水を吸い込ませた海綿やらスポンジやらが乾き始めるも、こたつから出てわざわざ水を足しに行くのはめんどくさい。そう思って小さな紙片を舌の上に載せようと思った刹那、テレビの画面から夏目雅子さんの声が鳴り響く。「なめたらいかんぜよ!」。
すいません! ほんの一瞬でも横着しようと思った自分を恥じる次第です!
とか何とか偉そうに言いながら、俺はこの映画を今までちゃんと観たことがないのだが、これを機会にいろいろと調べてみたら、衝撃的すぎる事実を知った。
「なめたらいかんぜよ!」という邦画史上に残る決め台詞を叫ぶ夏目雅子さんが演じていたのは、タイトルロールたる鬼龍院花子の役ではなかった。林田松恵という役だった。
どうも、この映画は、松恵の視点から鬼龍院花子の生涯を描くという構造を取っているらしい。で、鬼龍院花子を演じた女優は誰かといえば、「高杉かほり」とある。またもやすいません。全然知らない人です。年末年始の休みの間にブルーレイで確認します!
しかし、俺は断言する。この映画のタイトルとあのシャウトだけを知っていて肝心の映画自体は未見という人の9割5分は、鬼龍院花子=夏目雅子だと勘違いしているであろうことを。
ここで思い出すのが、内山田洋とクール・ファイブだ。幼い頃、内山田洋というのは真ん中で朗々と歌っている男性ではなく後ろの方でワワワワーとコーラスを付けている地味なおじさんのことだと知った時、どうにも納得がいかなかったものだが、何だか俺はまったく需要のない話をしているような気がしてきたので、話題を変えるね。
2015.12.28(月)
文・撮影=ヤング