◆箱根駅伝に勝手に参戦する
箱根駅伝に限らず、マラソンなどの長距離走の中継では沿道を走る一般人の姿を目にするものだが、あれは、生きてるうちに一度はチャレンジしてみたい事柄のひとつである。
かつて、ホイチョイ・プロダクションズが「気まぐれコンセプト」と並行してビッグコミックスピリッツに連載していたコラムに「いたずらの天才の息子」なる投稿コーナーがあったのだが、そこに下記のごとき秀逸なネタが紹介されていたことを覚えている。
似たような背格好の小学生を数十人単位で集めて、まったく同じ服装(体操着など)をさせた上でタイガーマスクなり何なりの覆面をかぶせ、マラソン中継の沿道をできうる限り全力疾走させる。
もちろんスピードと持続性において出場ランナーに敵うわけはなく、よく見る野次馬並走者のように、あえなくフレームアウトしてゆくわけだが、そのたび、コースの途中に待機させた同じ扮装に身を包んだ別の子どもを次々投入し、断続的に画面に登場させるのだ。
中継を通じ、長距離走のエキスパートと一進一退の攻防を繰り広げるあの小さなタイガーマスクはいったい誰なのだ? と、日本中に話題を呼ぶだろうという寸法である。
お年玉代わりに妖怪メダルを1枚あげるので、このプロジェクトに参加したいよい子のみなさんは、俺まで連絡してください!
ついでに言うと、正月の長距離走といえば大阪国際女子マラソンも思い出されるわけだが、この大会といえば、THE ALFEEによるイメージソングである。1987年から提供を続けてきたそのイメージソングを集めたアルバムが2004年に発売されているのだが、そのジャケットが何だかすごいのでここに掲げておく。
●冬休みに観たい映画〈102〉
『幻の湖』
監督:橋本忍/出演:南條玲子、隆大介、長谷川初範/1982年 日本/DVD/2,700円/発売元:東宝
ジョギングとソープランドと戦国時代と宇宙開発と愛犬。どこをどう考えても喰い合わせが悪いとしか思えない5つの要素が奇跡のマリアージュを果たした怪作。
……という説明を読んで嘘か誇張の類だと感じた読者は、頼むから一度観てほしい。俺が何ひとつ出鱈目なぞ言っていないことを理解してもらえるだろう。ヒロインが琵琶湖の周りをランニングして愛犬を殺したにっくき敵を追い詰めたその末のクライマックスのあの瞬間(ほんとにあの瞬間としか言いようがない。言いようがないんだ。とにかく観てほしい)には、誰もが手を叩き快哉を叫んでしまうことだろう。
原作・脚本・監督を手がけた橋本忍は、黒澤明の『羅生門』『生きる』『七人の侍』などのシナリオで知られる日本映画界のレジェンド。しかし、東宝創立50周年記念映画として大々的に公開されたこの作品は、あまりにも独特すぎる内容に起因すると思われる記録的な不入りから、たったの2週間ちょっとで打ち切られてしまった。
ちなみに、SAKEROCKが2006年にリリースしたアルバム『Songs of instrumental』のインナースリーブには、いわゆるスペシャルサンクスとして、なぜか『幻の湖』に感謝が捧げられている。ということは、おそらくみんな大好き星野源君も観たに違いない!
2015.12.28(月)
文・撮影=ヤング