美しいそぎ切りで味わいが“3倍美味しくなる”!
ももの食べられない部分を切り落としたら、太ももとドラムを関節から分けます。この関節の場所が意外にわかりづらいのは丸鶏を捌いた時にもお伝えしましたね。左ももなら真中より少し左側にあります。これは“慣れ”なので経験を積めば、わかるようになりますよ。
左写真のように包丁とフォークを使って開きながら切りましょう。同様に右ももを切り分けます。
両ももを切り分けたら「八つ落とし」の完成です。次に胸肉を食べやすい大きさにそぎ切りします。ここで薄刃包丁の登場です。
実はこのそぎ切りが至難の技! これができれば味わいが“3倍美味しくなる”という説も! フォークの背を使って押さえながら、包丁を適度な力でスーッと引いて切ります。この断面がボソボソになると食感が損なわれ、美味しさも半減。1回ごとに包丁を拭いて丁寧に切りましょう。
手を使う場合は指を立てずに添える感じで。また切る方向も肝心です。繊維に向かって切ると、口の中でホロッと崩れて美味しさが倍増! これぞプロのテクニックなので覚えておきましょう。
ここからもプロの技! もちろんこのまま出してもOKですが、さらに美しさを追求してみます。ドラムの骨の部分をきれいに見せるため、周りの皮や肉をそぎ落とします。ここでは手を使って、肉を回しながらペティナイフでそいでいきましょう。
骨の端を包丁の“あご”を使って切り落とします。もしあれば牛刀を使うと楽に落とせます。
骨の断面がとてもきれいですね。もうひとつ、プロの裏技を教えましょう。ドラムは裏側に隠し包丁を入れておくと、簡単に骨から身が外れます。この一手間で手を汚さずにいただくことができます。
これでデクパージュができました。第1回の「丸鶏のパーツについて知っておこう」で鶏肉の構造を学ぶことが、美しいデクパージュにとって大切だと理解できる、プロのテクニック。習得すれば、あとはセンスよく盛り付けるだけ。丸鶏を自分で焼いた人も、お店で買った人も、今年のクリスマスのローストチキンを、ぜひこのプロのデクパージュで“3倍”美味しくいただきましょう!
●レッスン体験記
自分は料理が普通にできると勘違いしていたことが発覚! そぎ切りしたら皮も一緒に剥がれてしまったり、力の加減がうまくできずに断面がボロボロになったりで四苦八苦。でも、中でもきれいに切れたものを盛り付けたら、なかなか良いではありませんか。プロのコツを教えてもらったおかげで、見た目より“5倍”美味しさを感じました。経験がモノを言うそうなので、これからは丸鶏を買って何度も「デクパージュ」したいと思います。マカロン由香先生のレッスンは料理の楽しさを知ることができて、どんどん深みにハマりそうです。次は包丁の使い方を学びたい!
●教えてくれたのは……
マカロン由香さん
出張料理人。出張料理・料理教室「Le Macaron YUKA.」代表。エコール辻東京・フランスイタリア料理マスターカレッジ卒業後、渡仏。パリのエコール・リッツ・エスコフィエにて学び、オテル・リッツ・パリほか3ツ星レストランにて修業を積む。帰国後、フランス料理の出張料理人として活動を開始。一般家庭のホームパーティから大使館や企業レセプション、政治家、一部上場企業社長、芸術家、芸能人の会食まで、さまざまな形態の出張料理を請け負う。2005年にスタートし、2012年から東京・代官山のキッチンスタジオで開講している料理教室「Le Macaron YUKA.」では、料理の作り方やプロセスのみならず料理の歴史・文化、プロのコツやおもてなしのセンスまでを直伝。著書に『出張料理人が教える 本当に使えるおもてなし本』(講談社)、『マカロン由香のビストロ料理a.b.c』(河出書房新社)、『出張料理人が教えるレシピと盛りつけのおもてなしルール』(講談社)他。
オフィシャルホームページURL http://macaron-yuka.com/
2015.12.18(金)
文=高橋綾子
撮影=橋本 篤