マレー半島とボルネオ島北部にまたがる常夏の国、マレーシア。実はこの国、知る人ぞ知る美食の国なのです。そこでこの連載では、マレーシアの“おいしいごはん”のとりこになった人たちが集う「マレーシアごはんの会」より、おいしいマレーシア情報をお届け。多様な文化が融け合い、食べた人みんなを笑顔にする、とっておきのマレーシアごはんに出会えますよ。

マレーシアの本格打ちたて麺「パンミー」

 今回紹介するのは、讃岐うどんのようにコシがあり、つるりとなめらかなのどごしの麺。何を隠そう、私がマレーシア滞在中にいちばんよく食べた麺で、帰国後も真っ先に恋しくなる味。ぜひマレーシアに旅をする際の「ごはんリスト」に加えて下さい。

パンミーは漢字で「板麺」と書く。生地をこねたあと、板状に麺をのばすことからこの名前になった。約4リンギ(約100円)。

 パンミーの最大の特徴は、打ちたてのもちもち麺。マレーシアの麺料理には生の麺を使うことが多いのですが、たいていの麺は製麺所からの仕入れ。ところがこのパンミーは、たとえ小さな屋台でも、店内で手作りをしていることが多いのです。

生麺を使っているため数に限りがあり、朝だけ営業という屋台もある。中国系の料理なので、漢字の看板を探そう。

 なぜ店内での手作りにこだわるのかというと、パンミーはもともと家庭で作る麺だったから。友人のリムさんいわく「一人暮らしの姉さんが帰宅するたびに、母さんがパンミーを作っていた。うちには麺棒がなかったので、生地を板状にのばす時はビール瓶を使っていたよ」とのこと。

パンミーの麺の形状は、細麺・幅広麺・ちぎり麺の3タイプある。ちぎり麺は手でひっぱって生地をのばす。細麺と幅広麺は棒でのばして包丁でカット。

 最近では家庭で作られることが少なくなり、そのかわりにパンミー屋台が大繁盛。こんなふうに食文化は移り変わっていくのですね。

 それではさっそく、私が愛してやまないパンミーを紹介しましょう。

2015.09.18(金)
文・撮影=古川 音