山本満由美さん
家族:夫、長男0歳11カ月

会社名:株式会社キッズステーション
肩書き:制作部 マネージャー
勤務体制:フルタイム
※ただし、1時間早く出社し、1時間早く退社するフレックス

 「おまたせしましたー!」ホイホイと元気よくお茶を運びながら、会社の会議室に現れた山本さんは、フットワーク軽く、誰からも好かれそうな雰囲気をもつ女性だった。

 山本さんの働くキッズステーション(※)は、こども・アニメ専門チャンネルだ。山本さんは、大阪のイベント会社を経て、キッズステーションに勤務してすでに9年となる。

 現在はオリジナル番組を手がける制作部に在籍。こども番組「子育てTV ハピクラ」に携わるほか、動画配信アプリの開発メンバーとして10月のサービス開始に向けて奮闘中だ。

 会社は、定時が9:45~18:00。8:45~17:00という1時間前倒しの勤務体制があり、山本さんはその制度を使い、フルタイムで勤務している。

 時短ではなくフルタイムにした理由をきくと、「周りに対しても、家族に対しても、生半可な気持ちで戻ってくるのではないという姿勢を伝えるため」というから、なかなかのガッツの持ち主。

 そんなパワフルな印象の山本さんだが、実は育休中は、精神状態も不安定になってしまったとか。寝ている我が子を見れば「このまま息をしなくなったらどうしよう」、泣いている我が子を見れば「ずっと泣いているけれど、どこか悪いのではないか」などと、目の前の小さな生命体に対する心配の尽きることがなく、友達に笑われるほどだったという。

 「一日じゅう家にいて家事と子育てをやるというのが、出産前の生活とギャップがありすぎて順応できなかったのかもしれません。ゆとりがあると、いろいろ余計なことを悩んじゃって精神衛生上あまりよくありませんでした」と笑う。

 2015年4月に子どもが生後6カ月となり職場復帰を果たしてからは、あたかも水を得た魚のよう。「仕事があって『子どもと離れた自分の世界がある』という状況はすごく幸せなこと。それは子どもにとっても自分にとってもよかった」と感じている。

育児参加の男女差がない社会って作れないのかな?

 もちろん働き方は以前に比べて変わった。それは「何が何でも17時に切り上げる」という容赦ないルールを守らなければいけないということだ。

 「仕事が終わらないなら残業しても仕方がない」というルールは、子育てママには存在しない。いかに限られた時間内で効率的なパフォーマンスをするか、模索する日々が続く。

 ありがたいことに、ほかの社員が「そろそろ17時だよ」と声をかけてくれたり、「周りを動かす力をつけろ」といったナイスアドバイスをくれる“イクボス”がいるおかげで、17時に会社を出ることができている。山本さん自身の不断の努力もあってだろう、会社の同僚や上司、夫も理解があり、風当たりも強くない。「それでも」と山本さんは言う。

「なぜ男性はいつまでも会社にいられるのだろう? 残業ができるのだろう? 介護、育児、家事、仕事。女性に期待されている役割が男性のそれと比べてあまりにアンバランスではないか?」

 そんな疑問を拭えないまま、17時には会社を飛び出し、保育園に飛び込む毎日だ。

※キッズステーションとは?
ハピクラをはじめとするオリジナルの知育情操番組や「それいけ! アンパンマン」などの番組で未就学児童と忙しいママを応援! 子どもから大人まで夢中になれるエンタテインメントが勢ぞろい。夢、感動にあふれ、想像力を刺激する楽しさいっぱいの“こども・アニメ専門チャンネル”だ。

山本さんが携わっている番組「子育てTV ハピクラ」。出産前とは違う視点が持て、仕事の楽しさが増した。(C)キッズステーション

2015.09.26(土)
文・撮影=HITOMINA