LOVE:鳩
艶めかしい鳩肉を胸で、ももで

日本橋|ラペ

 「最近、楽しかったレストランは?」と聞かれたら、「もうご存じかもしれないけど」とおずおず答えるのが「ラペ」。なにしろ、去年の10月にはオープンし、しっかりとご案内もいただいておきながら、グズグズとまもなく1年が経とうとしているのだから。

 しかし、それでもいい! 私は今、「ラペ」に夢中! と言いたい!

最初のひと品。パンデピスと白レバームースを重ねた小さな料理。

 店内ではたくさんの女性たちが夏期限定の「桃のコース」を楽しむ姿が多く見受けられたが、我々は堂々、通常コース。この楽しいおまかせコースは白レバーとパンデピスを重ねたクリスピーなひと口サイズのスターターで幕を開ける。パンデピスのスパイスとレバーのコク、そしてサクサク感。飲めないはずのワインに思わず手が伸びるひと品である。

 さらにスターターもうひとつ。なんだか苗箱みたいな箱に土のようなものが敷き詰められ、丸っこいものがふたつ。農場のイメージが広がるこちらはドライトマトとパンチェッタの小さなマフィン。ああ、こちらもむぎゅーと味が詰まったおいしいひと口だ。土みたいなのはセップ茸だそう。

収穫したくなる、セップ茸にのったドライトマトとパンチェッタのマフィン。

 早くもテンションが上がりつつあり、次はアミューズ。いただいた「ひとことメモ」みたいなメニューには「ブーダンノワール」と書かれているのだが、出てきたのはたこ焼き!? 丸いブーダンノワールに青のりのごとくトリュフをかけ、ソースもまるでたこ焼きソース。

たこ焼きブーダンノワール。どこから見てもたこ焼き。桃生ハムが添えられる。

 お次はにょきにょきと芽が出たオードブル。イメージは無人島か? 桃コースじゃない我々にもついに桃が! というわけで桃のスープの海に浮かぶのは根セロリのムース島だ。とろけるように甘い桃のスープにまろやかなムースを混ぜながらいただいていると、なかからは白えびやうに、ホタテが出てくる。まるで、真丈椀をいただいているみたい。芽もほんの少しの優しい食感のポイントに。

桃のスープ。魚介が入っているという展開が面白い。

 オードブル2品目は名物と噂に聞いていた「おかしなフォアグラ」だ。まず、お菓子缶がテーブルに届けられ、開けるとそこにゴーフルにフォアグラを挟んだ「おかしなフォアグラ」が入っているというプレゼンテーション。その後、お皿に盛りつけてもらえるが、お菓子なので手で食べる。手焼きだというゴーフル自体がおいしくて、アイスクリームとかチョコレートを挟んでくれてもいいんですよっ、と思うが、やはりねっとりとしたフォアグラが最高なのです。

「おかしなフォアグラ」のおかしさ。ゴーフルが妙に見事に焼けていた。

 3品目のオードブルは唐揚げのようなひと品だ。まるで和食のよう。ハモはベニエにしてあって、衣がとても軽い。ハモと衣の軽さのバランスが実に巧妙。とにかくサクッとひと口、ふわわわわとおいしさが広がる。さらに、オードブルのラスト! カレーの香りをつけたソースでいただく穴子のガレットで、穴子とカレーの味がいかに合うかを再確認。ゴロゴロとトマトやパプリカがのっている。

ハモのベニエ。ちょっとスープっぽくも味わえる。下にはなすが。
穴子のガレット。スパイスというより“カレー”の香りがする泡ソース。

2015.09.20(日)
文・撮影=北條芽以