米国との急接近はキューバを変えてしまうのか?

くわえタバコで自転車を走らせる渋いおじさん。

 観光客がいるエリアこそ、レストランやバーが並んでいるが、ちょっと離れれば、そこは庶民の生活の場。道端に座って世間話に興じる元気なお年寄りや、くわえタバコで自転車を走らせる新聞配達のおじさん、ゲバラのメッセージにも出会うことができる。

サルサを大音量でかけまくる美容院。新しく立派な設備は少ないけれど、人々のパワーを感じるハバナ旧市街。

 モノはない。最新の設備もない。でも、海がきれいで、音楽とラム酒が心地いいキューバ。ちょっとしたワルはいても、たいていの場所は治安がいいし、お金はなくても、みんなとびきりお洒落をして、ご近所さんが助け合って生きている。東京で仕事に追われ、モノにあふれる生活を送る中で、「経済的な豊かさと心の豊かさは別のものだな」ということを教えてくれたのが、ハバナ・コヒマルの旅だった。

パンクした車は自力でさっと修理する。

 2015年4月には1961年の国交断絶以来初の米国・キューバ首脳会談も行われ、これからはこの国も様子を変えていくかもしれない。でも、心の豊かさはずっと失わないでいてほしいと思う。

庶民の日常を見守るのは、街のいたるところに記されたゲバラのメッセージだ。

芹澤和美 (せりざわ かずみ)
アジアやオセアニア、中米を中心に、ネイティブの暮らしやカルチャー、ホテルなどを取材。ここ数年は、マカオからのレポートをラジオやテレビなどで発信中。漫画家の花津ハナヨ氏によるトラベルコミック『噂のマカオで女磨き!』(文藝春秋)では、花津氏とマカオを歩き、女性視点のマカオをコーディネイト。著書に『マカオノスタルジック紀行』(双葉社)。
オフィシャルサイト http://www.serizawa.cn

Column

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2015.05.19(火)
文・撮影=芹澤和美