ライヴはプロもアマチュアも関係なく、気になるものがあればできる限り行くようにしている。その中で、今注目しているバンドのひとつが“虚弱。”。メンバー全員が平成生まれという女子4人組で、しかも歌のない演奏だけのインストゥルメンタルバンドだ。
最近では9月17日に、新宿にあるLOFTをはじめとするライヴハウスなど5店舗6ステージで開催した“ETERNAL ROCK CITY.2011”に出演。これは19歳のツジユウヤ氏が高校生の頃から始めたもので、音楽に敏感な若い世代がどっと集まっていたイベント。そこでも異彩を放っていたのが虚弱。だった。
とにかく楽曲も演奏も一度聴いたら、またすぐに聴きたくなるような魅力に溢れている。ギターが内面から溢れ出すような破壊的な轟音を響かせたかと思うと、グロッケンシュピール(鉄琴)のようなロマンチックな音色を放つ楽器を使い、心の機微を奏でていく。ベースラインは自由にマイペースで踊り続け、ドラムスは楽曲の鼓動というよりも、揺れ動く感情のように細やかで、時には大胆に変拍子を刻んでゆく。何しろ曲名も「哲学者の論破」「nennen」といった具合いで、独自の世界観を描きながらサウンドスケープを拡げ、進むのだ。
凝っていても、決して難しい音楽ではなく、音のカオスが創り出す情景に佇みながら、独特なグルーヴに心地よく漂うことができる。面白いことに、一定のビートやグルーヴに乗りやすい一般的なロックやR&Bのような音楽ではないのに、自然と身体が動いてしまう。しかも聴きやすいのは、その選んだ音色や流れるメロディが、最終的に光を感じさせるように明るくポップであり、曲の長さもコンパクトにまとまっているからだと思う。
2011.10.15(土)
text:Natsumi Itoh photographs:Takayuki Mishima