井上芳雄のハマリ役を受け継いだ「エリザベート」

――そんな「エリザベート」のルドルフですが、井上芳雄さんのハマリ役を受け継ぐということに関してはどのように思われましたか。

 ルドルフが決まったときに芳雄さんご本人から、「ルドルフ頑張れ」とエールが書かれたCDをいただいたんです。そのときは後にユニット(StarS)を組み、こんなに仲良くさせていただくとは思ってもいませんでした(笑)。役を受け継ぐことに関しては、みなさんいろいろあるとは思いますが、プレッシャーもありながら、役の大きさや周りの期待などをそしゃくして、ちゃんと受け入れ、進もうという決意が必要だと思うんです。それに当時は(演出の)小池(修一郎)先生やプロデューサーの方の「この役を浦井に」という想いにちゃんと応えたい、と無我夢中にやっていました。今振り返れば、“浦井版ルドルフ”というものを試行錯誤しながら必死に突き詰めていたんだと思います。

――最終的に“浦井版ルドルフ”は、どのようなものになったのでしょうか。

 信念の強さみたいなものを持っている一人の人間として捉えられるようになりましたし、結果的に対立してしまう父フランツ・ヨーゼフとの親子の絆や愛を感じられるようなものも表現しなくてはと考えるようになりました。とても光栄なことで、何年も何百回も演じるなか、新しい発見ができた。とにかく、役を通して学ぶことが多かったんです。

――また、06年に初演した「アルジャーノンに花束を」は、昨年14年に再演されましたが、浦井さんにとってどのような作品といえるでしょうか。

 8年前の初演は、初めて座長を務めさせていただくことでも、本当にプレッシャーでした。そんななか、この責任を自分に与えてくださった演出の荻田(浩一)さんをはじめ、みんなでゼロから作っていったといっても過言ではない初演でした。それをお客様が毎回スタンディングオベイションで支えてくださって、本当に宝物のようなキラキラした思い出しかない作品でした。だからこそ、8年ぶりの再演はうれしかったですね。その反面、自分の変化とともに怖くなった部分もあったのですが、それを全部受け入れて、今回のカンパニーならではのものを作っていくことに取り組んでいこうと思いました。つまり、自分にとって再演であっても、新しい作品に挑む新鮮な気持ちでした。(次回に続く)

浦井健治
1981年8月6日生まれ。東京都出身。00年、「仮面ライダークウガ」で俳優デビュー。04年 ミュージカル「エリザベート」の皇太子ルドルフ役に抜擢。その後ミュージカルからストレートプレイまで数々の話題作に出演。13年には、井上芳雄、山崎育三郎とともにユニット「StarS」を結成し、日本武道館公演をも成功させる。4月には「デスノート The Musical」、7月には「トロイラスとクレシダ」の主演を務める。

『ボンベイ ドリームス』
映画スターを夢見るスラム街の青年・アカーシュ(浦井健治)は、ひょんなことから映画監督を目指す女性・プリヤ(すみれ)に一目ぼれ。さらに、プリヤの父で映画プロデューサーのマダンに気に入られ、大スター・ラニ(朝海ひかる)との共演のチャンスを手に入れる。
■東京公演
2015年1月31日(土)~2月8日(日)/東京国際フォーラム ホールC
■大阪公演
2015年2月14日(土)~15日(日)/梅田芸術劇場 メインホール
http://www.umegei.com/bombaydreams/

【衣装提供】
KATHARINE HAMNETT LAB(プリマクレール)
東京都渋谷区神南1-13-10-3F

ONASSIS(オナシスジャパン)
東京都渋谷区恵比寿西2-12-13

くれい響 (くれい ひびき)
1971年東京都出身。映画評論家。幼少時代から映画館に通い、大学在学中にクイズ番組「カルトQ」(B級映画の回)で優勝。その後、バラエティ番組制作を経て、「映画秘宝」(洋泉社)編集部員からフリーに。映画誌・情報誌のほか、劇場プログラムなどにも寄稿。

Column

厳選「いい男」大図鑑

 映画や舞台、ドラマ、CMなどで活躍する「いい男」たちに、映画評論家のくれい響さんが直撃インタビュー。デビューのきっかけから、最新作についてのエピソードまで、ぐっと迫ります。

2015.01.09(金)
文=くれい響
撮影=中井菜央