フランスには育成機能がない

――エマニュエル・マクロン政権の教育政策はどうですか。

 それなりには一生懸命やっていますが、マクロン自体というよりも、フランス――そして西洋社会の限界が来ているのだと思います。今、フランスの15歳から21歳の若者の失業率は約21%と高い。企業が即戦力を求めるからです。当然、新卒者は即戦力がないので職がない。

 日本では新卒一括採用が中心であることをフランス人に話すと、「素晴らしい」と言われます。日本企業には育成機能があるわけですね。マクロンはそれに気づいて、今慌ててインターンシップなどの拡充をさせています。ただし、これもフランスの社会がすでに即戦力を求める体質になってしまっているので、なかなか難しいでしょう。「人の育成」なんていう儲からないことをやっていたら、株主から指摘されてしまいますから。

――もう一つ、物価高に対する不満もあったと思いますが、マクロン政権の物価高対策は功を奏していないのでしょうか。

 功を奏していないということではありません。2018年に黄色いベスト運動が起き、それが沈静化したところにコロナ禍に突入した。コロナ対策が一段落した2022年2月に、ウクライナ戦争が勃発した。2025年には第二次トランプ政権が誕生……と、物価高騰につながる出来事が立て続けに起こりました。特に今年2月にはトランプ大統領がイランで戦闘を始めてしまったので、ガソリン代などが高騰してしまったわけです。

――外的要因が大きかったのですね。

 そのとおりです。外的要因というか、これははっきり言ってアメリカ要因です。アメリカの中東要因が、フランスの物価高に大きくかかわっていますね。

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・この対談は文藝春秋PLUSにて公開された動画(10月24日公開)をWEB記事用に抜粋・再構成したものです。
・動画では対談の様子をすべてご覧いただけます。
https://youtu.be/v7UDwcCG2f0?si=NxxAGAd_dKJqX13L

広岡裕児(ひろおか・ゆうじ)

1954年、川崎市生まれ。大阪外国語大学フランス語科卒。パリ第三大学(ソルボンヌ・ヌーベル)留学後、フランス在住。ジャーナリストおよびシンクタンクの一員として、パリ郊外の自治体プロジェクトをはじめ様々な業務・研究報告・通訳・翻訳に携わる。代表作に『エコノミストには絶対分からないEU危機』(文藝春秋社)、『皇族』(中央公論新社)他。

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