時代を彩る洗練と、皇室ファッションの確立
昭和35(1960)年には、待望のお世継ぎとなる浩宮徳仁親王(現在の天皇陛下)がご誕生。皇太子妃としてご公務をこなしながら、皇室で初めて親子同居が実現し、自ら子育てもされました。この頃の美智子さまは、まるでスタイル画から抜け出したかのような洗練された装いで、多くの国民の目を奪いました。
その背景には、皇室が「神聖不可侵な存在」から「親しみやすく国民の生活に寄り添う存在」へと変化を求められていた時代も関係しています。
初の民間出身の皇太子妃となった美智子さまのファッションは、戦後の復興期から高度経済成長期へと向かう日本において、明るい希望と洗練された現代性を示していました。
そして、高い感性と自由な発想を示すことで、当時の女性たちに憧れと社会へ羽ばたく勇気を与えてくれたのです。
美しいシルエットの洋服に、よく身に着けていらっしゃったのはターバン風の帽子。洋服に合わせてさまざまな色のものをご使用。手袋やバッグ、靴まで美しく調和された装いは、美智子さまならではの洗練された美を生み出していました。世界基準のロイヤルファッションを体現し、日本の洋装文化の質の高さを国内外に強くアピールした時期でもあります。
外国を訪れた際の晩さん会では、デコルテラインを美しく見せるドレス(ローブ・デコルテ)の姿も大変お見事でした。クラシカルな王道ロイヤルスタイルでありながら、美智子さまの持つ気品と立ち居振る舞いの美しさが引き立ち、皇室の気高さと国際舞台での存在感を決定づけたと言っても過言ではありません。
外国訪問の場で見せた、現代的なエレガンスと細やかな配慮
1970年代の訪欧でお召しになった、シャープなベルトとスタイリッシュな帽子を利かせたキャメル色のセットアップは、活動的でありながらエレガントさを損なわないアクティブな装いでした。現代的で自立した女性像を提示し、海外メディアからも絶賛を集めます。
中でも印象的なのが、1987年(昭和62年)のアメリカ訪問時、レーガン大統領主催のパーティで美智子さまがお召しになった、白とネイビーのバイカラーのドレスです。胸元には、日米友好にゆかりのあるハナミズキの花飾りがあしらわれていました。相手国のファーストレディが纏う鮮やかな赤のドレスと美しく調和しつつ、東洋的な奥ゆかしさと西洋的なモード感を絶妙に融合させたデザインは、国際親善の場における巧みな「装いのメッセージ」として今も語り継がれています。
